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マンハッタン計画 75年後の核超大国 <5> 知られざる拠点 via 中国新聞

廃棄物 今なお住民苦悩

 

核時代の始まり 本質問う

米ミズーリ州セントルイス市の中心部から西に約30キロ。ブリッジトンという町の緑豊かな丘を下りると、異様な光景が現れた。 

廃棄物処分場の全面が緑のシートに覆われ、あちこちで「プシュ、プシュ」と音がする。丘の上に住むロビン・デイリーさん(63)は「廃棄物が地下で高温になり、くすぶっている。ガスが出て臭いもする」と怒りをあらわにした。 

住民たちは「火災」と呼び、「延焼」への恐怖も口にする。米環境保護庁によると「原爆開発のマンハッタン計画で出た硫酸バリウムに土壌を混ぜた計4万3千トンなどがある」というウエストレイク埋め立て処分場が隣り合っているからだ。 

セントルイスでは1942年に市中心部の工場でウラン精製が始まり、オークリッジのウラン濃縮施設とハンフォードのプルトニウム製造施設に原爆の材料を供給した。戦後は廃棄物が国際空港の近くに野積みされるなどして、土壌と水源が汚染される。さらに廃棄物の一部が73年、この処分場に移された。民間委託だったことが、管理のずさんさや責任の所在のあいまいさを招いたと言われる。 

「開発の代償」

デイリーさんは自ら専門家に頼んで自宅を検査。微量のトリウム230が検出され、核鑑識で「原爆由来」とされた。自宅買い取りを求めて運営会社と係争中だ。「ついのすみかが…」。とうに怒りを通り越した。ただ処分場の現在の運営会社や行政は、放射性物質は外部に漏れていないと説明。「がん多発」を訴える住民と対立する。 

「米国では輝かしい研究拠点ばかりに光を当てるが、原爆は私たち米国民も苦しめ続けている」とカレン・ニッケルさん(54)。幼い頃、廃棄物が置かれた空港周辺で遊んだ。いまはウェストレイクの近郊に住み、自己免疫疾患に苦しみながら廃棄物の撤去や健康被害の補償を求める。活動仲間のドーン・チャップマンさん(38)は「長期の低線量被曝(ひばく)という米国の核開発の代償を認めれば、被害者の規模で収拾がつかなくなると政府は知っている」と声を振り絞った。 

行事に抗議も

セントルイスで精製されたウランは原爆開発の道を決定付けたという重要な意味を持つ。まず42年12月にシカゴ大で使われ、エンリコ・フェルミの研究チームが制御された核分裂反応実験に初成功した。 

そのシカゴ大では昨年12月、75周年を記念する行事があった。空にきのこ雲を発生させるアートが披露され、歓喜の声が上がったという。しかし同大3年のインディア・ウェストンさん(21)は友人とダイ・インをした。「きのこ雲の上ではなく下の被害者に目線を」という無言の抗議だった。 

授業を通じて核問題に関心を持ったのがきっかけだったという。その中でセントルイスの現状も知る。軍事用、民生用を問わず、直面する被曝の問題。ウラン採掘や核実験で先住民が被害を受けるなど、差別的な社会構造と表裏一体である事実―。核の本質に気付かされた。 

若者の言葉を聞いて思った。「核時代の出発点」としてのマンハッタン計画の意味と、より広い視野で向き合うべきは、むしろヒロシマとナガサキなのではないか、と。 

ウェストンさんは7月末に被爆地入りした。広島市立大の集中講座「ヒロシマと平和」を受けるために。新たな学びがもたらすものは大きいはずだ。(金崎由美)=おわり 

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