[…]
2013年9月に設置された同研究会は、医師や物理学の専門家ら6人で構成。これまでに8回の会合を開き、国内外の研究論文を検討したり、専門家から聞き取りをしたりしてきた。研究対象は、原発労働者やCTスキャンの放射線影響を研究したものも含まれる。
今回の報告では、国が定める被爆地域(南北約12キロ、東西約7キロ)の外側でも低線量被曝を認定。長崎市東部の一部地域では、原爆後に降ったちりの影響で、最大で25ミリシーベルトの被曝があった、と推定した。
だが25ミリシーベルトほどの低線量被曝が健康に影響を及ぼすかについては、「不確実な状況」と報告した。広島・長崎の被爆者を調査した従来の研究では、100ミリシーベルト以上の被曝でがんのリスクが高まるとされている。
ヨーロッパでは11カ国約120万人の子どもを対象にした、CTスキャンの放射線影響を調べる研究が進んでいるという。研究会では当面、その結果を待つ。朝長会長は取材に対し、「福島の原発事故もあり、低線量でも被曝した人にとっては深刻な問題。健康影響をはっきりさせたい」と語った。
研究会は被爆地域の拡大・是正や原爆症認定など、被爆者援護行政の見直しにつなげるため、長崎市が設置した。今月上旬には、市と朝長会長が厚生労働省に経過を報告。厚労省からは「新たな知見が得られれば検討したい」などとする回答があったという。
原爆投下時、国の被爆地域の外にいた「被爆体験者」の一部は、被爆者健康手帳の交付を求めて訴訟を起こし、最高裁などで審理中だ。25日には市役所で市の担当課が、訴訟の原告らに経過を報告。原告側は市に、「手帳は被爆した人がもらうもので、健康影響の有無は別問題」などと意見を述べた。