籾井・NHK会長 「原発報道は公式発表ベースで」 発言、局員や識者批判 via 毎日新聞

「記者も視聴者も信用してない」「情報源限定、危うい」

 NHKの籾井(もみい)勝人会長が、熊本地震への対応を協議した先月20日の局内の災害対策本部会議で「原発については住民の不安をいたずらにかき立て ないよう、公式発表をベースに伝えてほしい」と指示した問題に、局内から批判が上がっている。メディアの在り方を研究する学者も「多様な情報を提供するの が報道機関の役割だ」と指摘している。

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これに対し元共同通信記者の小黒純・同志社大教授(ジャーナリズム研究)は、5年前の福島第1原発事故時の公式発表で、避 難に必要な情報が住民に十分届かなかったことを問題視する。その上で「パニックになるからと情報を出さないのはおかしなことで、情報源を明らかにして多様 な情報を伝えるべきだ。受け手である視聴者は、その中から取捨選択する。知っていたのに情報を出さなかったら、ジャーナリズムとして責任が問われる」と話 す。さらに発言した籾井会長を「NHKの記者も視聴者も信用していないかのような態度だ」と批判した。

 NHK最大の労働組合である日本放送労働組合の中村正敏中央執行委員長は25日にホームページで「公共放送として報道にあたってベースとするものは、取 材してわかった事実であり、判明した事実関係である。行政が何事かを発表し、あるいは認定した時点で『事実』が確定するのではなく、『事実』はNHK独自 の取材活動のなかで見いだされるものだ」との見解を発表した。

 NHKの放送現場で働く中堅職員は取材に「権力は都合の悪いものを出さないのが世の常だと先輩から教えられてきた。公的機関、科学者、民間といったさま ざまな情報の中から、私たちが必要だと考える客観的事実を伝えるべきだ。情報源を自ら縛り当局の情報に限ってしまうのは相当危ういこと。報道の役割を考え るべきだ」と話した。

 また、NHKのプロデューサーの一人は「あの人は報道機関とは何なのかを本当に分かっていない」と籾井会長にあきれた様子だ。ただ、こうも話した。「首相の任命した経営委員が会長を選ぶ制度になっている以上、いつかは起こりうる事態だった。(NHKの組織運営を定めた)放送法を変えない限り、根本的な改 善はできない。放送法で規制される側の職員は声を上げにくいので、外部からの健全な批判が不可欠だと思う」【青島顕、日下部聡】

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