芥川賞作家の柳美里(ゆう・みり)さん(49)が2日、東京電力福島第1原発から20キロ圏内の福島県南相馬市小高(おだか)区に移住した。家の一部を改装して書店開業を目指す。
「今日、引っ越してきました。本屋を開くんです。よろしくお願いします」。柳さんは同日、JR小高駅前の食堂でおかみさんに頭を下げた。小高区では、東日本大震災の原発事故のため出されていた避難指示が昨年7月に解除された。だが約1万2800人いた住民はまだ約2000人だ。柳さんは「採算が取れないと尻込みしていたら復興なんてできない」と年内の開業を意気込む。
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資金は苦しい。「銀行に融資を申し込んだら『小高で書店なんてボランティアだ』と断られた」と柳さん。今後、ネット上の募金「クラウドファンディング」を活用する。
この日、自身の蔵書だけで段ボール300箱以上の引っ越し荷物が運び込まれた小高の家で、柳さんは「売り場の隣に私が小説を書く机を置き、私の書棚の本も手に取ってもらえるようにしたい。公民館のような場所になれば」と汗をぬぐった。【鶴谷真】