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東電元幹部の「注意義務」と「予見可能性」-原発を止めておけばよかった via Yahoo!News

かつて公害裁判では、「注意義務」は、最重要ポイントの一つだった。「知っていたのに対策を取らなかった」という被害側の主張に対して、被告は「いや、知らなかった」で済ませようとする。そこで重要なのは、「知っていたのに対策を取らなかった」ことを明らかにする証拠である。

東京電力福島第一原発事故の「業務上過失致死傷罪」で強制起訴された3人の東電元幹部刑事裁判でも、構造は似ている。

被告である勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長は、6月30日の初公判で「津波による事故を予見するのは不可能だった」などと無罪を主張した。つまり、予見できなかったのだから、注意しようがないという論だ。

公害裁判の教訓「注意義務」

たとえば、水俣病では、「1962年以前には知らなかった」で済ませようとする被告に対し、原告側は、水俣病被害は1955年以降に起きており、排出者には十分な注意義務があった旨を主張した。

その結果、裁判所は、化学工場が廃水を工場外に放流するにあたっては、常に最高の知識と技術を用いて廃水中に危険物混入の有無および動植物や人体に対する影響の如何につき調査研究を尽してその安全性を確認しなければならない。

また、万一有害であることが判明し、あるいは又その安全性に疑念を生じた場合には、直ちに操業を中止するなどして必要最大限の防止措置を講じ、とくに地域住民の生命・健康に対する危害を未然に防止すべき高度の注意義務を有するとして、被害者側が勝った。(拙著「四大公害病」中公新書より一部抜粋)

原発が抱える放射性物質は、万一有害どころか、事故以前から有害であることは周知の事実であり、常識的に考えれば、東電に課せられる「注意義務」は水俣病の原因企業であるチッソの比でないことは明らかだ。

東電の「注意義務」は法令でクリア

指定弁護士の冒頭陳述は、その注意義務が、原発では数々の法令に定められていることを明らかにした。

1.原子炉等規制法は、原子炉施設の保全、原子炉の運転について、「保安のために必要な措置を講じなければならない」(第35条第1項)と定めている。

2.電気事業法は、「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を経済産業省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない」39条第1項)と定めている。

3.発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(経済産業省令)は、「原子炉施設並びに一次冷却材又は二次冷却材により駆動される蒸気タービン及びその附属設備が想定される自然現象(地すべり、断層、なだれ、洪水、津波、高潮、基礎地盤の不同沈下等をいう。ただし、地震を除く。)により原子炉の安全性を損なうおそれがある場合は、防護措置、基礎地盤の改良その他の適切な措置を講じなければならない」(第4条第1項)と規定している。

つまり、水俣病の裁判では、「注意義務」の根拠を打ち立てることにも困難を極めたが、東電裁判では、それが易々と政府の定めた法令で「なければならない」とされたことによってクリアされている。

(略)

その一つは郡山市で市議をしている蛇石郁子さんの報告だ。

「(被告は)互いをかばい合う証拠を持ってきた。津波を想定していないというもの。こちら側の証拠は、とにかく会議をたくさんたくさん、東京電力の中でたくさーん会議を開いていて、その結果、対策を実際に取らなかったということがよく分かる内容になっていた。最後には、実際に巨大な地震が想定以上のものが来てしまったので、防潮堤を作っても役に立たなかっただろうと(被告側は)言った。じゃ、なんのための会議だったのか」

(略)

そして、海渡弁護士は冒頭陳述から次のように読み上げた。

「10m盤を超える津波の襲来から、本件原子力発電所を守る対策としては、

1.10m盤上に想定水位を超える防潮堤を設置するなど、津波が敷地へ遡上するのを未然に防止する対策、

2.建屋の開口部に防潮壁、水密扉、防潮板を設置するなど、防潮堤を越えて津波の遡上があったとしても、建屋内への浸入を防止する対策、

3.建屋の開口部に水密扉を設置する、配管等の貫通部に止水処理を行うなど建屋内に津波が浸入しても、重要機器が設置されている部屋への浸入を防ぐ対策、

4.原子炉への注水や冷却のための代替機器を津波による浸水のおそれがない高台に準備する対策、があり

これらの全ての措置をあらかじめ講じておけば、本件事故の結果は未然に回避することができました。東京電力は、本件事故後、事故調査報告書において、これらのことを明らかにしています。

そして、津波はいつ来るか分からないのですから、津波の襲来を予見したなら、これらの安全対策が完了するまでは、本件原子力発電所の運転を停止すべきだったのです。」

海渡弁護士はここが重要だとして、次のように強調した。

どの時期に10m盤を超える津波が襲来することを予見できた予見できたか、しなければならないかが、大きな争点になると思われていたんですが、(検察役の指定弁護人たちは)原発を止めておけば良かったんだという論を立てています。

報告会後の記者会見では、福島原発告訴団長の武藤類子さんも感想を求められ、「(東電が)お金と労力を惜しまなければ、こんなにたくさんの人が苦しむことはありませんでした」と振り返った。

全文は東電元幹部の「注意義務」と「予見可能性」-原発を止めておけばよかった

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