夏の参院選は、九州の改選1人区で野党候補が一本化して自民候補と争う構図がほぼ固まった。野党側は安全保障関連法の廃止をよりどころに政権批判票の取り込みを狙うが、原発や環太平洋連携協定(TPP)などに対する立場の違いは脇に置いたまま。アベノミクスなど政権の「実績」を前面に掲げる与党側も、安倍晋三首相が「悲願」とする憲法改正を持ち出すことには慎重だ。与野党ともに機微に触れるテーマは避けたい「争点隠し」の思惑が透ける。
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候補者となる無所属新人は、九州電力労働組合を抱える連合鹿児島の出身。川内原発の停止、即時廃炉を訴える共産県委員会の野元徳英委員長は、立場の違いを会見で問われ「今の日本政治に必要なのは、憲法に基づいた政治運営をしていくことだ」と述べるにとどまった。九州での野党候補の一本化は、政策合意書や確認書といった文書を交わし、民進か無所属の候補に一本化し共産が擁立を見送る形をとるが、文書は「安保法反対」などの「最大公約数」的な内容にとどまる。「原発などに触れると共闘が崩れかねない」(鹿児島県の民進関係者)事情があるからで、同県の政策合意書は九州有数の農業県にもかかわらず、TPPについても何ら触れていない。
具体的な共闘態勢づくりを巡っても、各地で互いの距離感が露呈している。
共産からの候補者一本化の申し入れを受け入れる方針を確認していた民進佐賀県連は21日、常任幹事会での正式決定を見送った。選挙事務所を同じにしたり、ともに集会を開いたりという「共闘」では保守票が離れることを懸念する異論が噴出したためだ。
民進新人に一本化した長崎でも、同党県連が「共同候補」の名称にこだわる。「統一候補だと共産党も選対に入れないといけない」(県連幹部)などの理由からだ。長崎や鹿児島では、候補予定者側が推薦を求めないにもかかわらず、共産の県委員会が推薦を決定。一方、宮崎では民進側の「緩やかな連携」の求めに応じて推薦を見送るなど、共産側の対応もまちまちとなっている。
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