原発で事故が発生した時、どの地域の住民をどのタイミングで、どこに避難させるのか。その判断をめぐり、原子力規制委員会と全国知事会、政府で意見が割れている。
問題は、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の信頼性にある。
原発から放出された放射性物質の量や風向きなどを基に、拡散状況を予測し、住民の避難に活用するはずだった。東京電力福島第1原発事故の時は、原発から放出された量が分からず、公表が事故から12日後になった。
そのため、規制委は昨年4月、SPEEDIを今後も住民避難の前提として活用するのは弊害が多いと結論付けている。
予測に必要な放射性物質の放出量は、事故時はすぐには把握できない。不正確な状態で情報を提供しても避難を混乱させ、危険が増すという判断だ。住民避難は、地域で測定される放射線量の実測値で判断する仕組みにした。
これに全国知事会が反発した。「放射性物質の拡散が始まった後の避難は住民の被ばくを前提にしている」と、昨年夏にSPEEDIの活用を国に要望している。
苦慮した政府は11日、SPEEDIを自治体の判断で使うことを容認した。自治体がSPEEDIを運用したり、原子力事業者から情報提供を受けたりすることを想定している。政府はSPEEDIを活用しない方針で、「住民への説明責任は自治体にある」という姿勢だ。
責任の丸投げであり、許されない。自治体には「そこまでの専門能力を求められても困る」との声がある。困惑するのも当然だ。
[…]SPEEDIの開発、運用にはこれまで150億円の国費が投じられている。代替システム開発にはさらにコストがかかる。技術的な課題も多いだろう。
安全確保を徹底して原発を維持するコストは膨大だ。そこまでして原発に依存する必要があるのか。詳細に検証するべきだ。
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