佐賀、長崎、福岡3県で28日にあった九州電力玄海原発(玄海町)の事故を想定した防災訓練には、県内から住民や自治体関係者ら約2600人が参加した。住民避難や負傷者搬送が「シナリオ通り」に進んだ一方、渋滞や複合災害、悪天候時でも避難ができるのかと、参加者の不安の声は今回も繰り返された。30キロ圏の県民19万人の避難の道筋は、まだ見えていない。【石井尚、原田哲郎】
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住民らは、県の計画通り、半径5キロ圏内の予防防護措置区域(PAZ)から移動を開始。30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)は、時間をずらして2段階で行動した。渋滞を避ける目的だが、玄海原発から約2キロに住む男性会社員(49)からは「実際に事故が起きたら順番に避難せず、道路が渋滞するのではないか」と疑問の声。男性は集合場所についても「放射線の防護対策がない。移動するまでに被ばくしてしまわないか」と心配した。佐賀市の佐賀工高体育館には、唐津市二タ子地区の住民が避難した。住民らは今年、試験的に導入したゲート型モニター2台を使って車両のスクリーニングを受けた。家族と共に参加した公務員の平山貴章さん(43)はゲート型モニターについて「緊急時の設置は大変だと思う。訓練だったため車両は少なかったが、もっと数を増やさないと車が詰まって渋滞になるだろう」と話した。
唐津市の離島・高島(人口約260人)では、島民20人が島内の屋内退避施設(シェルター)になっている高島公民館に避難したほか、島民に扮(ふん)した市職員ら24人が同保安部所属の巡視艇など5隻に乗船して、2・4キロ離れた唐津港に逃れた。
消防団員の介助で最初に公民館に避難してきた1人暮らしの野崎ハルミさん(82)は「手押し車がなければ歩けない。事故が起きたらどうすればいいのか。島外へとなれば更に大変」と不安を口にした。
船での移動はスムーズだったが、野崎海治区長(66)は、島民の75%が高齢者(65歳以上)の現状に「消防団46人と自主防災会6人で対策していくが、完全ではない」と指摘。「東日本大震災のような津波なら、船も使えず、かなり高台に上がらないと」と妙案が浮かばぬ様子だった。
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