2014年4月28日に話はさかのぼります。津波で被災し、郷里・相馬市の岩子地区に仮住まいする相馬双葉漁協を訪ねました。その津波で九死に一生を得た職員で、同級生の池田精一さん(58)にアポを頼み、佐藤弘行組合長に会いました(相馬の浜の被災状況は『余震の中で新聞を作る16~相馬・南相馬へ/津波からの生還 その2』参照)。
福島県沖の漁業は、福島第1原発事故発生後の2011年4月4日、東京電力が構内の汚染水約11500トンの汚染水を海に放出した後、漁の自粛が続いています。再開を悲願とする相馬の漁業者と県水産試験場による地道なモニタリング調査の結果、2012年6月から、放射性物質の不検出が継続的に確認された魚種のみの試験的な操業・流通が始まりました。以後、相馬双葉漁協といわき市漁協(2013年10月から)が限られた量の漁を続けています。2014年9月の漁期からマガレイ(アカジガレイ)などが加わり、同年末までの漁獲対象は計56魚種まで増えました。
「ほそぼそとした漁獲だが、築地(東京)の仲卸業者らは『自信を持って売るから、継続的に出して』と応援してくれている。相馬の名物のカレイもやっと、流通に乗せて大丈夫との国の判断が出た」。佐藤組合長は安堵した顔で語りました。4月16日、厚生労働省が福島県に、マガレイを原発事故後の出荷制限から解除を指示したという朗報があったばかりでした。しかし、佐藤組合長が懸念を漏らしたのは、東電が2013年7月22日、第1原発からの汚染水の海洋流出を認めたとのニュースが流れた後の風評と混乱の再来です。
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「たしか、(浄化後は)きれいな水だというが、それは、おたくたちの解釈。いったん流された後の風評被害は、お金では解決できないんだ。きれいな水だと言うなら、なぜ、福島県の漁民がこんなに苦しむのか。日本には3万トン、5万トンのタンカーがあるのだから、それで洋上投機をしたらいい。一部の人間の考えだけで決められては困る」「汚染水のイメージが一人歩きしている。基準は確かに守られても、われわれに最後の責任が押し付けられることになる」
「最初は(地下水バイパス計画では、原子炉建屋の)遠くから、さらに今度は近いところの井戸からくみ上げるというが、一番危ない。一般の人が聞いたら大変だ。試験操業にブレーキがかかる。影響が出る。(汚染水対策の)いろんな計画は良くても、何一つ満足な成果がないではないか。ALPS(多核種除去設備/トリチウム以外の62種の放射性物質を除去するプラント)はトラブル続きで、構内の汚染水漏れの報道は続いている。(サブドレンでも)必ず問題が起きるのではないか。東電の説明は、きれいごとばかり。失敗の話題が出てこない」
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「『大丈夫、大丈夫』と言って、後から『すみません』とお詫びする話がずっと続いている。今回のサブドレンだって、3月14日にあった前回の説明会(余震の中で新聞を作る110『風評の厚き壁を前に/相馬 その1』参照)の時点では、われわれからは想定されなかった事案。それから半年の間に持ち上がってきた問題だ。企業責任の取り方、説明責任の取り方があるはずだが、それを隠すことではないか。最終的には、漁協組合委員の同意をなくして進めないだろう。想定する事案を早めに説明しろよ。その上での信頼関係だろう」
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「あれはパフォーマンスだったが、首相がここで第一声とは、いまだかつてなかった。今回も短い時間で、復興を加速していろいろやりますということは言ったが、原発事故や汚染水の話はしなかった。後のことは、大勢いたマスコミに向けてしゃべったのだろう」2回目のサブドレン説明会があった11日、高橋さんは自宅で振り返り、こう続けました。「第一声で、周りの漁業者たちはいい反応だったと思う。アベノミクスの話は、(経済成長が巡り巡って)復興を早くするという理屈だったが、それよりも、みんな、『いまの状態を何とかしてくれ』という思いなんじゃないか。試験操業がいつまで続くのか、賠償金をいつまでもらっているのか。それでは、若い人は希望を捨てて、いなくなる。東京オリンピックの1年前には、首相の言う『復興』の証拠として、試験操業を、本操業にしてほしい」。
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国の担当者は「海洋放出を決めている事実はない。海洋放出や蒸気での放出、地中に入れる方法など、さまざまな選択肢を検証している」と説明。「関係者の理解なしに、いかなる処分もしない」と強調した。 〉(12月26日の河北新報記事)〈 原子力規制委員会の田中俊一委員長が福島第1原発の多核種除去施設(ALPS)で処理した水を希釈し海に放出すべきだと発言したことについて、東京電力の福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は25日、「処理水はタンクにためていく計画で、外に放出することは考えていない」との見解を示した。
ALPSはストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質など62種類の核種を取り除くが、トリチウムは取り除くことができない。増田氏は「トリチウムを貯蔵するか分離するかなどは、国が公募し研究を進めようとしている。東電が判断できる問題ではなく、学識経験者などの意見を踏まえて決める」と述べた。 〉(12月26日の河北新報記事より)
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