「当事者の声、残さないと歴史から原発事故被害が消される」via 民の声新聞

証言集まとめた宇都宮大・清水准教授が福島で講演。「汚染や被曝、無かった事にはさせまい」

原発事故以降、栃木県民や福島県からの避難者たちの声を聴き取り、証言集にまとめた宇都宮大学国際学部准教授の清水奈名子さんが15日午後、福島県福島市で講演し、「当事者には余力が無く、自ら記録を残せない。記録が無いと後々、原発事故被害が無かった事にされてしまう」と記録の重要性について語った。傾聴を通して見えて来たのは、国が原発再稼働や海外輸出にまい進する中で避難や放射線防護が自己責任論に収れんされ、汚染や被曝について当事者が語りにくくなっているという「閉塞感」だった。認定NPO法人「ふくしま30年プロジェクト」(福島市南矢野目、阿部浩美理事長)の主催。

【「支援法」骨抜きと自己責任論】
総選挙真っ只中。「国民の生命や財産を守る」と与党候補者たちは連呼するが、清水准教授は「原発事故という国家存亡の危機の時に、国家は一般市民を優先的に保護しなかった。そのための能力も準備も無かった。さらに、7年目になったらまるで無かったかのようにされてしまっている。そんなに少子高齢化が心配なら、なぜ原発事故被災地の支援にもっと多くの国費やエネルギーを注ぎ込まないのか」と厳しく批判する。
多くの人からの聴き取りを通して感じた「汚染や被曝リスクについて自由に話せない」という閉塞感。「語りにくさ」は立場を問わない、被災者共通の悩みという。
「お母さんたちは『PM2.5やインフルエンザが怖いからマスクしよう、人混みは避けよう』という話は出来るのに、放射能の話は出来ない。まさに原発事故や放射能汚染が単に健康や科学の問題では無く政治的な問題であるという事だ。それが望むと望まざるとにかかわらず、私たちの生活に土足で入って来た。多くの人々が巻き込まれているのに、放射性物質は目に見えないから見なかった事にする、異変が起きても関係ない事にする、という構図が出来つつある」
国会では超党派で「子ども被災者支援法」が成立したが、「議員立法を官僚が骨抜きにした典型。法の精神が施策に反映されなかった。多様な選択肢を用意して最大限の支援をするための法律が全会一致で成立したのにパブリックコメントも反映されず、国民を守らないという国の姿勢を見せつけられた」。挙げ句、復興大臣自ら避難者への「自己責任論」を口にする始末。「避難せず福島に残った人が『自分がまるで子どもを被曝させる悪い母親のように感じる』と涙ながらに話していた事があったが、決して個人の自己責任では無い。汚染地域から避難する権利を保障しなかった国や加害企業の責任だ。汚染などまるで無かったかのように基準を引き上げた事で、避難した人と避難しなかった人との間で分断が生じてしまった」と指摘する。
本来、予防原則に立って国民を守るべきはずの国は「原発の再稼働や海外輸出に躍起になっている」と警鐘を鳴らす。「原発事故は起きたが、克服・復興可能という〝新たな安全神話〟が生まれつつある」と清水准教授。「高度な専門性を必要とする原子力問題はブラックボックス化しやすく、民主主義とは共存出来ない」と語った。

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