ユニクロ×原発 潜入ジャーナリスト対談#2「僕らの潜入取材の方法と掟」via 文春オンライン

(抜粋)

鈴木 実は俺も、同じことを考えました。本名だったので身元が割れて、原発の仕事をクビになったんですけど、女房の姓になれば、また潜入できると思ったんです。ところがバレたあとに、東芝名で「潜入ルポ等を懸念し、新規入所者を入念に確認していたはずが、東芝Gr(グループ)に潜入された」という文書が回ったんです。俺を入れてくれた会社の人にまた迷惑をかけたらシャレにならないなと思って、止めました。

横田 会社の人は鈴木さんをライターだと知っていた、と書いてありましたよね。

鈴木 俺を入れてくれた5次請けの会社は、取材と知って入れてくれたんです。俺がクビになったあとは当然、その会社は東芝から干されました。「原発の事実を世の中の人に知って欲しいから、自分はどうなってもかまわない」と経営者が腹をくくってくれたから取材が出来た。心から感謝していますし、負い目もあります。横田さんの場合、名前を変えても採用されない可能性がありましたよね。ライター仲間と話してたんです。「俺たち、そもそもユニクロに合格しないな」って(笑)。

(略)

「難民より私たちだよね」

横田 原発の現場と比べると、危険と言っても程度が違いますが。原発ではメモは取れないでしょう。ICレコーダーを回しっ放しですか?

鈴木 服は全部支給されるんですが、作業着にはポケットがないんです。中の下着にだけポケットがあって、小物を入れても落ちない仕組みになっているので、そこにICレコーダーを入れてました。

横田 マイクは?

鈴木 マイクは外につけられないんですけど、みんな全面マスクをしているので大声でしゃべるんです。怒鳴り合いのような会話なので、下着のポケットでもなんとか録音できます。それを毎日、パソコンに移していました。暑さと放射線のせいで、作業は1日2時間ぐらいしかなかったんですけど、後でまとめてやるのは大変ですから。何気ない雑談で出た話を拾うのが面白かったですね。ポンと本音が出ますから。

(略)

鈴木 昔の営業マンはタバコを吸えって教えられたというけど、喫煙室ってもっと気が抜けるんですよ。原発の現場で、全面マスクを外してやっとタバコに火をつける、あの一体感。俺はもともと吸うので、かなり助かりました。あと、お酒ですね。労働者から話を聞くのに、酒が飲めないとかなりのハンデです。

横田 飲み会だと、相手のガードはさらに下がりますからね。

鈴木 おっしゃる通りです。だから積極的に飲みに行きたい。原発のあと、密漁の取材をしたんですよ。アワビやナマコやしらすの密漁って、メチャメチャ暴力団事案ですから。密漁したものを築地で売ってると聞いて、築地の仲卸に潜入取材をしたんです。

(略)

バレないように東京―いわきを往復6時間

横田 原発取材のときは、現地に泊まってたんですか。

鈴木 宿舎があって3、4人で相部屋なんですけど、俺だけ泊まりませんでした。仕事ができないし、電話も取れないし、荷物でバレるから。ホテルは復興需要でどこも満室だし、1軒だけある漫画喫茶にも泊まれないときは、帰ってくるんです。東京からいわきまで約200キロを車で往復6時間かけて通勤するので、周りからおかしいと思われてました。「母が病気で」と言い訳してたんですが、「何こいつ」っていう話にはなってたみたい。

横田 原発で働きながら往復6時間ですか。

鈴木 大変でしたけど、怪しまれるから絶対に遅刻しないんですよ。働き方や取材のやり方に瑕疵があると、あとでそこからつっこまれるから。

全文はユニクロ×原発 潜入ジャーナリスト対談#2「僕らの潜入取材の方法と掟」

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