被爆証言聞く会 バーから伝えた8月6日…37歳店主逝く via 毎日新聞

活動記録、20日出版

 広島市中区のバーで11年にわたって被爆証言を聞く会を開いたマスターが今月3日、37歳で亡くなった。被爆3世の冨恵(とみえ)洋次郎さん。広島生まれなのに原爆に無知だった自分を恥じ、証言を聞く場を自らの店に設けた。被爆者の思いや語り継ぐ大切さを伝えようと、冨恵さんが病に侵されながらつづったエッセーと会の記録が20日に出版される。【東久保逸夫】

本のタイトルは「カウンターの向こうの8月6日」。冨恵さんは高校卒業後、20歳でバー「スワロウテイル」を構えた。被爆した祖母がいながら、原爆について客に聞かれても答えられず、もどかしさを覚えた。2006年2月から、原爆の日に合わせて毎月6日に聞く会を開催。「原爆を売り物にするな」と非難も浴びたが、新たな試みに多くの若者が足を運んだ。

 本にはバーでマイクを握った「はだしのゲン」の作者、中沢啓治さん(故人)らの証言や被爆者たちとの交流、被爆体験の継承について自問した日々がつづられている。昨夏に出版依頼があり、「近い将来、被爆者はいなくなる。今書いておけば読んでもらえるし、間違いも指摘してもらえる」と筆を執った。

 だが、この年の暮れ、冨恵さんを病魔が襲った。今年1月には、末期の肺がんで余命2カ月と宣告された。声がかすれ、薬の副作用で髪が抜け落ちていった。生きた証しを刻むように、冨恵さんは書き続けた。校了した原稿が届いた6月、友人の代読で一字一句を最終確認した。作業をやり遂げた約10日後、永い眠りに就いた。

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今月6日にあった140回目の「聞く会」で証言をする被爆者の寺本貴司さん。背景には冨恵さんの写真が張られていた=広島市中区で2017年7月6日、山田尚弘撮影

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本は230ページで税別1400円。問い合わせは光文社(03・5395・8172)。

全文は被爆証言聞く会 バーから伝えた8月6日…37歳店主逝く

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