5年前の福島第一原発事故を受けての原発安全策が、日本と米国とで大きく異なっている。あの未曽有の被害を教訓に将来の原発事故にどう備えるか。日米でその姿勢はあまりにも違う。その違いは高浜原発の運転を差し止めた大津地裁が指摘する「危惧すべき点」に通じる。
米テネシー州メンフィス──。国際的な大手航空貨物輸送会社フェデックスの本拠地がある。その国際空港から8キロほどの、かつては陸軍の物流拠点があった広大な土地に、米国の電力各社が共同で運営する緊急事態対応センター(National SAFER Response Center)の倉庫がある。
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メンフィスだけでなく、実は西のアリゾナ州フェニックスにも、ほぼ同じ機器をそろえたもう一つの緊急事態対応センターがある。東西二つの緊急事態対応センターはそれぞれ担当の区域を持っているわけではない。どこの原発事故であっても、それぞれのセンターが対応できる。にもかかわらず、まったく同じ機能を持つセンターを2カ所設けたのには理由がある。いずれかのセンターがハリケーンなどで使えなくなる事態を想定しているのだ。同じ場所に10セットの機器を置いておくよりも、2カ所に5セットずつ分散して置いておくほうが、多様性を高め、したがって安全性も高まる、という思想に基づく。こうした対策は、福島第一原発事故の教訓から、米政府の原子力規制委員会が外部支援を充実させるよう電力各社に要求し、それに応えるため米国の原子力業界が考案した。業界では「多様で柔軟な対処戦略」という意味を込めた造語で「フレックス(FLEX)」と呼びならわしている。米国の原子力エネルギー協会のアンソニー・ピエトランジェロ上級副理事長は「私たちの原子力産業の防護は世界最高水準になるだろう」と述べる。
日本にはこうした緊急事態対応センターはない。 電気事業連合会が日本原子力発電に依頼してこの3月に発足させた「原子力緊急事態支援センター」が福井県にあるが、そこにある機器は、放射能が漏れ始めた後の高線量下での活躍を想定したロボット類が中心。給水ポンプや大容量の発電機はない。
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当サイトでは米原発の問題、とくに3.11後の対応の問題点を指摘する記事を度々掲載してきました。例えば、NRCの対応の欠落を専門家が指摘したこの記事。あるいは内部告発といえなくもない規制委員会(NRC)のエンジニア7名が指摘した多くの原発の冷却装置のデザインミス。にも関わらず、安全対策が日本のそれよりはるかに充実しているとなると、再稼働のとてつもない無責任さをあらたに実感します。