米原爆開発プロジェクト「マンハッタン計画」の関連工場があった米中西部ミズーリ州セントルイスで、広島、長崎への原爆投下から70年以上を経て地域住民に健康不安が広がっている。核廃棄物の管理がずさんで、放射性物質による健康被害が懸念されている。住民のがん発生率が高いとのデータもあるが因果関係は不明で、州や連邦政府は本格調査を始めた。
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セントルイスの国際空港脇に放射能を表す黄色の標識で立ち入りを禁じた一角がある。1960年代まで核廃棄物の保管場があり、当時の写真を見ると大量のドラム缶が乱雑に報知されていた。
病気報告続々
セントルイスにはウラン精製工場があり、廃棄物は40年代から発生。保管場の隣を川が流れ、以前はよく氾濫した。健康冷えがいへの懸念は川の周辺住民の間で数年前から言われだし、住民運動の団体もできた。
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州は約600万人の州民データを基に、地域の住民20万人ががんにかかる予想値を算出し、実際の診断数を比較した。報告書によると、白血病は410人の予想値に対し実際は456人。乳がんや結腸がんも多かった。全てのがんの診断数は計1万6862件。州全体の発生率で推計される診断数は1万6100.8件で、4.7%高い。
見解分かれる
米毒物・疾病登録局は「健康被害を引き起こす被曝かを調査中。確認できれば改善策を勧告する」と回答した。報告書について日本の識者は見解が分かれる。岡山大の津田敏秀教授(環境医学)は「統計的に有意な増加で、不自然な数値だ」と指摘した。東大の唐木英明名誉教授(薬理学)は「がん発生にはもともと地域差がある。直ちにがんが増えたとは言えない」とした。
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核廃棄物は60年だいに民間業者が買い取り、一部は数キロ離れた場所に埋め立てられたが、別の問題が浮上した。埋め立て地に隣接する一般廃棄物処分場で数年前から火がくすぶり続け、核廃棄物に延焼する恐れが出てきた。
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