福島の自然・文化を記録に残す 那須在住の映画監督・安孫子さんに聞く via 東京新聞

 二〇一一年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を機に、那須町に住みながら福島県下郷(しもごう)町を拠点に活動するドキュメンタリー映画監督がいる。福島の人々の営みを描いた作品を精力的に発表している安孫子亘(あびこわたる)さん(57)だ。廃校となった校舎に構えたという仕事場を訪ね、福島への思いを聞いた。(北浜修)

(略)

-その後、福島を活動拠点にしたのは。

 「震災と原発事故以降、福島を撮影したいという思いが強くなった。地方にとってこれほどの大打撃はないが、福島の美しい自然や伝統文化を映像に記録し、残していきたいと考えた。撮影する場所に住むか拠点にするのが、ポリシーでもある」

 -会津地方の下郷町を選んだのは。

 「(原発から離れた)会津にも目を向けてほしいから。廃校舎を(仕事場に)再利用できることになり、選んだ。寝泊まりする部屋もあり、今は下郷町にいることの方が多い」

 -これまでにさまざまな作品を発表している。

 「(会津の)檜枝岐(ひのえまた)村の農村歌舞伎を守る人々を撮影した『やるべぇや』(一一年)、会津の語り部の女性を撮った『生きてこそ』(一三年)。山に入るマタギを撮影した『春よこい』(一五年)では、放射能の影響を表現した」

 -社会派ドキュメンタリーで、収賄罪に問われた福島県の佐藤栄佐久元知事を描いた「『知事抹殺』の真実」(一六年)もある。

 「佐藤さんは原発にいろいろと問題提起していた。罪を犯す人かどうかを公平に見てもらえれば」

 -今後どのような活動をするのか。

 「福島には多くの被災者がいる。福島にいるからこそ、被災した人々の声を届けていかないといけないと思う。被災者の声をフォローしていきたい」

◆宇都宮で来月、上映会

 「『知事抹殺』の真実」の上映会が八月二十日午後二時から、宇都宮市竹林町のトヨタウッドユーホームすまいるプラザで開かれる。大人千円、中高生五百円。上映後、安孫子監督が舞台あいさつする予定。問い合わせは、とちぎ映画上映会=電028(621)7006=へ。

 <あびこ・わたる> 1959(昭和34)年、北海道小樽市生まれ。専門学校卒業後、映像プロダクションでテレビのドキュメンタリーなどを制作。90年代には野生動物の撮影のため、アフリカ・ケニアで一時暮らした。98年、東京から那須町に移住。福島県下郷町を拠点に、作品制作や上映会開催などの活動を続けている。

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