「宇宙戦艦ヤマト」が流れる 福島原発の小さな一歩 via 日本経済新聞

 福島第一原子力発電所では、軽装備で作業できる「Gゾーン」と呼ばれるエリアが敷地の96%に広がった。増えたのはたった1%にすぎないが、東京電力ホールディングス(HD)関係者は「たかが1%、されど1%」と話す。事故のあった2号機と3号機を歩いてみてその意味を探った。

■敵は暑さ

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敷地内は、放射線量などに応じて「Red」「Yellow」「Green」の頭文字で示す3つのゾーンに分けられている。この日は「Y」と「G」ゾーンを取材した。

今回の見直しで「Y」から「G」へと変更されたのは、具体的には1~4号機の周辺道路など。もちろん建物内などは「R」で厳重な防護服が必要だが、周辺からパトロールなどが軽装備で可能になったという。

「G」は一般服エリアとも呼ばれ、使い捨て防じんマスクにヘルメット、一般作業服という軽装備で動き回ることができる。2号機と3号機の間を軽装備で歩いてみると、爆発時に壊れた建物の破片が数メートル先にむきだしになっている。

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靴下と手袋は3重。薄めのレインコートのような「カバーオール」と呼ぶ服で全身を包む。マスクもするため呼吸も多少しづらい。防護服の下の作業服の胸ポケットなどに保冷剤を入れていたが、外を歩くと汗ばんだ。この格好で真夏の日差しの中を歩くのは厳しいだろうなと感じる。

防護服の着脱に計40分ほどかかることを考えれば作業効率も上がる。「されど1%」は現場の作業員の肌感覚だ。

■難作業の前の静けさ

事故当時の水素爆発で屋根が大破してしまった3号機には、溶け出した燃料デブリ(ごみ)のほか、使用済み核燃料が建物内のプールに残っている。燃料取り出しのため「ロールケーキ」と現場で呼ばれているカバーが屋上に設置されている。

ロールケーキへと昇っていくエレベーターで目についたのは「さらば地球よ~」で始まる「宇宙戦艦ヤマト」の歌詞が書かれた紙だ。エレベーター内ではこの曲のメロディーだけが流れる。「必ずここへ 帰ってくると」。作業員たちはこの歌詞をながめ何を思うのだろうか。以前は、ZARDのヒット曲「負けないで」の音楽がかかっていたという。

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■タンクだらけ

敷地内を移動しているといやでも視界に入ってくるのが汚染処理水をためるタンクだ。原発を冷やすためにかける水が放射線で汚染されるため、浄化処理をしてからタンクにためている。形も様々。最初はコンテナのような四角いものを使っていたというが、容量が小さいため次に円筒形の「フランジ型」と呼ばれるタンクを使った。ただ、鋼板をボルトで締める簡易な設計だったため結合部から漏洩が相次ぎ、現在は漏れにくい「溶接型」への切り替えを進めている。

敷地内の汚染処理水は既に約100万トンに達し、タンクは約900基にふくれあがっている。工場で大枠を作って海上輸送し、現地で組み立てる。今も週に1基ペースで増えているという。汚染水は浄化後も放射性トリチウムが残る。基準以下の濃度に薄めれば科学的には海洋放出が可能とされるが、風評被害の懸念などから処分方法は決まっていない。

一度でも使ったタンクは敷地外には運べない。敷地ではタンクを増設する余地が限界を迎えつつある。20年までに137万トンを保管できるようタンクを作る計画だが、追加で置ける場所は30万トンを切った。

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