経済産業省が、日本の中長期的なエネルギー政策の指針となる第5次「エネルギー基本計画」の素案を公表した。
将来の日本は、どんなエネルギーをどのような組み合わせで使うのがベストか-その問いへの指針であるはずなのに、先送りや曖昧な表記が目立つ。
素案はまず、地球的課題の脱炭素化を目指すため、太陽光や風力など再生可能エネルギーを初めて「主力電源」と位置付けて積極的に導入する方針を示した。これは評価したい。
だが、原子力については「重要電源」とする一方、「依存度を低減する」と玉虫色の表現を維持した。依存度低減を唱えるなら、実現への道筋や手順を示すべきなのに、それはない。
計画は夏にも閣議決定するという。その前に幅広い国民的議論を通じて、確かなエネルギーの未来図をつくるべきだ。
今回の素案は、計画の目標期間を従来の2030年から、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で温室効果ガスの8割削減を掲げる2050年に広げたのが特徴だ。その中でも30年度、そして50年度の電源構成をどう表記するかが焦点だった。
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特に30年度の電源構成には問題が多い。原発比率20~22%は依存度低減の大前提を空洞化するものだ。16年度の原発比率は2%にすぎず、実現には30基程度の稼働が必要だ。そのためには、原則40年の原発の寿命延長や建て替えなども必要となる。
福島原発の事故後、再稼働に至った原発は8基で、再稼働に批判的な世論も増えている。数値は非現実的ではないか。
一方、再生エネは16年度に全発電量に占める割合が15%に拡大している。30年度に22~24%というのは小さ過ぎる。発電コスト低減や送電線の有効活用、蓄電池の改良などを進め、世界的な趨勢(すうせい)に歩調を合わせるべきだ。それが多様な関連ビジネスの創出や温暖化対策としての石炭火力低減にもつながろう。
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