東京電力福島第1原発事故で被災した双葉郡の7町村で、住民の74%が今後の生活に経済的な不安を感じていることが、福島大の調査で明らかになった。生活設計を賠償金や年金・恩給に頼らざるを得ない実態も判明するなど多くの課題が浮き彫りになった。
調査によると、今後の生活の経済面で33・8%が「とても不安」、40・5%が「ある程度不安」と回答。生活設計のもとになっているのは(複数回答)、賠償金が56・4%、年金・恩給が50・7%で、勤労収入は32・7%にとどまった。賠償金支払い終了への不安を感じているのは78・3%に上った。
就労面の影響も大きく、震災前は36・4%だった正規雇用は20・6%に減少。逆に無職が28・4%から55・5%に増えた。震災前に正規雇用だった人の約3割が無職になっていた。
調査に当たった丹波史紀客員准教授(社会福祉学)は「住民の生活再建は途上で経済的に安定しているとは言えない。実態に合った賠償に加え、就労支援などが必要だ」と指摘した。
調査は2017年2~3月、協力を得られなかった広野町を除く7町村の全約2万6500世帯に調査票を郵送。約1万世帯から回答があった。
「人生壊された」続く苦悩
福島大による東京電力福島第1原発事故の被災地住民調査では、自由記述欄に4320人の回答があった。「人生が壊された」「原発事故がなければ、和やかに家族みんなで暮らせたはず」--。事故後も続く苦悩が記されていた。
記述欄には「できることならあの土地で最期を迎えたかった」(80代女性)「(避難先から)戻ったとしても生活できない。戻りたい思いだけではどうにもならない」(50代男性)と古里を思う声が目立った。
「福島県在住と言うだけで縁談がなくなった」「震災後、だんなの仕事がうまくいかなくなり、性格も変わってしまい離婚した」と、人間関係を巡ってつらい体験をした被災者も多い。
「子どもが学校に溶け込めずつらい思いをしているのに何もできず、申し訳ない」(30代女性)と、原発事故で子どもに負担を掛けたと自らを責める母親もいた。
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