東京電力福島第1原発事故による強制避難を前に自殺した福島県飯舘村の大久保文雄さん(当時102歳)の遺族が東電に計6050万円の損害賠償を求めた訴訟で、福島地裁(金沢秀樹裁判長)は20日、「原発事故による耐え難い精神的負担が自殺の決断に大きく影響を及ぼした」と原発事故と自殺の因果関係を認め、東電に計1520万円を支払うよう命じた。原告弁護団によると、原発事故の避難住民の自殺を巡る訴訟で東電の賠償責任を認めたのは3例目。
判決によると、大久保さんは飯舘村で生まれ育ち、事故前は日課の散歩や、縁側で友人との茶飲み話を楽しんでいた。だが、事故から1カ月後の2011年4月11日、原発の北西約30~50キロにある飯舘村が避難指示区域に指定されたことをテレビで知り、翌12日朝に自室で首をつって亡くなった。
裁判で原告側は「全ての知人と財産、生きがいが村にあり、原発事故で避難を強いられた以外に自殺の原因は考えられない」と主張。東電側は「自殺との因果関係は不明」と反論していた。
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「村はじいちゃんの全て。飯舘を離れろと言うのは死ねと言うのと同じ」。東電に責任を認めてほしくて15年7月、美江子さんらは提訴に踏み切った。「じいさんで金をふんだくるのか」。心ない言葉もかけられた。でも全国から100通近い激励の手紙も届いた。
年内に避難先の福島県南相馬市のアパートを離れ、飯舘村の自宅に戻るつもりだ。そして「東電には(仏前で)線香の一本でもあげてもらいたい」。東電が責任を認め、文雄さんに謝罪することを願う。【岸慶太】
◇東日本大震災から7年近くが過ぎる現在も、震災や原発事故に関連する自殺は絶えない。福島県の関連自殺者は昨年までに99人に上る。一昨年は7人に減ったが、昨年は12人と増加に転じた。年月とともに被災者が置き去りにされ、自殺者の増加につながることを心配する声が出ている。(102歳自殺 原発事故が強いた絶望)