東日本大震災発生時に福島県内の特別養護老人ホームで働いていて、現在は七尾市に避難している石井いづみさん(62)の講演が三日、金沢市三社町の県女性センターであった。「介護の現場で体験した3・11」と題し、自らの経験を語った=写真。
石井さんが働いていたのは東京電力福島第一原発から十一キロの施設。寝たきりの人を含む百五十人の高齢者が暮らしていた。震災発生の翌日、原発の爆発が起き、不確かな情報の中で施設に残るか避難するかの決断を迫られ「チーム力が誇りだった仲間同士が感情をさらけ出し、傷つけ合った」と混乱を振り返った。
その後、職員や入居者は福島県南部や栃木県などに散り散りになり、今も戻れない状態といい「人間の力で制御できない物質の事故からは何も得られない。二度と繰り返してはいけない」と訴えた。さらに「私たちが体験した恐怖や不安、傷つけ合う悲しみをもう誰ひとり味わってほしくない」と思いを伝えた。
講演は、原発に頼らない暮らしの実現を目指す市民団体「さよなら!志賀原発ネットワーク」などが、原発事故を見つめ直す機会にと主催し、約三百人が集まった。講演前には、原発を題材にしたドキュメンタリー映画「日本と原発 4年後」の上映もあった。 (小坂亮太)