原発 言っておきたいこと=山田孝男 via 毎日新聞

(略)

「原発は、安全か、危険かという問題ではない。原発は危険だ。原発がある限り、事故は起きる」

 今でこそ断言する今中だが、初めは違った。

 被爆2世。広島大付属高から1969年、大阪大工学部原子力工学科へ。東工大大学院在学中、大手原発メーカーに職を得るつもりでいたが、石油ショックで求人が冷え、断念。中国電力へ行こうかと迷い、76年、京大原子炉実験所の助手に採用された。

 本格的な原子力発電が始まって間もない黎明(れいめい)期。日本はそこから原発大国へ上りつめ、暗転した。その興亡とともに半生を歩んだという感慨がある。

 転機は米スリーマイル島事故(79年)だった。原子炉は、水がなければ溶けて破局的災害に至ると思い知った。チェルノブイリ(86年)も、福島も。

     ◇

 「放射能汚染地域で暮らすなら、余計な被ばくはしないほうがいい。一方、汚染地域で暮らす以上、それなりの被ばくは避けられない。(何が最優先か、人の判断は異なるので)自分で考えて決めるしかない。学者は情報を出す」

 −−と今中。

 低線量被ばくの長期的影響は不明である。

 今中は、縁あって福島県飯舘(いいたて)村で線量測定や聞き取り調査に携わった。その経験から、莫大(ばくだい)な国費投入にもかかわらず、除染が効率 的に進んだとも言えない現状の見直しを要請。被災地の子どもたちの、定期検診と被ばく評価のデータベース化も提言した。

(略)

 最終講義の聴衆は150人。昨春、退官した小出裕章元助教(66)が司会を務めた。小出は熊取を去ったが、今中は、しばらく実験所に残るという。

 最新統計によれば、世界で運転中の原発は計431基。建設・計画中を合わせれば614。建設・計画中だけで56とズバ抜けて多いのが中国である。

全文は原発 言っておきたいこと=山田孝男

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