原子力ムラの対極、熊取6人組の安全ゼミ終わる via BLOGOS (Blog vs. Media 時評)

福島原発事故で原子力ムラが見せた狼狽と無責任の対極にある存在が、京大原子炉実験所を拠点にした批判科学者集団「熊取6人組」でした。2月10日、彼ら が35年余り続けてきた原子力安全問題ゼミが幕を閉じました。グループで最後の実験所職員、助教の今中哲二さん(65)が定年退官するためです。最後の講 演で今中さんが「行政の意思決定や政策実行に係る人々、つまり役人や政治家に間違いや不作為があった場合には個人責任を問うシステムが必要だ」と締めくく りました。世界の原子力史で未曽有の惨状を招きながらぬくぬくとしている原子力ムラの政治家・官僚・学者への痛烈な非難です。

(略)

福島原発事故でこうしたデータ主義と現場主義が鮮やかだった例は『飯舘村南部に広い高汚染地域:現地調査で確認』(2011/04/04) で伝えたケースです。飯舘村での高い汚染が今中さんたちの現地踏査で初めて目に見える地図になりました。これには前段があって第253回「高汚染無視で飯舘村民を棄民する国とメディア」(2011/04 /01)で「国際原子力機関(IAEA)が福島原発の北西40キロ、飯舘村で測定した土壌の放射線レベルが極めて高かったのに、原子力安全・保安院は無視 を決め込み、マスメディアは事態の意味を理解しようとしません。国とメディアが一体になった文字通りの棄民です」と指摘した状況を打ち破る実測データでし た。

その飯舘村の今について今中さんは「除染という名の環境破壊が進み、惨憺たる有様です。国は来年には村民を帰す方針ながら、村民1人当りで何千万円とい う無駄な除染費用を使っています」と主張します。個人の生活再建こそが目的のはずなのに、村の再建に目標がすり替わり、除染しても放射能レベルは半分にし かならないのですから多くの村民は帰村しないでしょう。

今中さんや小出さんたちと福島原発事故の関わりは第258回「在京メディアの真底堕落と熊取6人組への脚光」(2011/05 /11)でまとめています。原子力ムラが発する「がん発生のリスクが高くなるという明確な証拠があるのは100ミリシーベルト以上」とする恐ろしく一方的 な断定を当時のマスメディアが臆面もなく報道する中で、中央官庁に依拠しないオルタナティブ情報源としての熊取6人組の価値が大きく見直されたのです。

この第112回安全ゼミの最後で小出さんが厳しい発言をしています。「福島原発事故で出された原子力緊急事態宣言は5年経っても未だに解除されていませ ん。この宣言があるために放射線防護関連法令が停止され、これから何十年もこのままでしょう。それなのに経済優先の安倍内閣は『アンダーコントロール』と 嘘をついてオリンピックを誘致しました。こんな国なら私は喜んで非国民になります」。他の地域なら放射線管理区域並の汚染として禁じられる場所に、福島で は人が住み、飲食をして寝ているのです。

全文は原子力ムラの対極、熊取6人組の安全ゼミ終わる

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