被ばく線量目標、国が設定せず〜原子力規制委員長 via Our Planet

原子力規制委員会の田中俊一委員長は28日の定例会見で、帰還のための被ばく線量の目標値(参考レベル)は、政府が定めるのでなく、自治体ごとに設定すべきとの考え方を示した。原子力規制委員会が、国際放射線防護委員会の勧告に記載されている参考レベルの設定を行う必要がないとの考えを明確したのは初めて。田中委員長は7月末の会見内容では、国が参考レベルを検討することは重要だと述べており、見解が180度変わった格好だ。
 
国際的には生涯1000ミリ基準がある
先週1週間、福島県の被災自治体をまわり、首長との懇談を重ねた原子力規制委員会の田中俊一委員長。22日には、南相馬市の桜井市長と懇談し、被曝線量の安全基準を提示して欲しい求められたが、「被曝については直線モデルという考えがあり「安全基準」を示すのは難しいと説明。その一方、「国際的には生涯1000ミリという基準がある」との発言していた。
  
28日の記者会見で、この発言の真意を問われると、田中委員長は生涯1000ミリという基準は「国際放射線防護委員会 ・ICRPの勧告で出されたもので、日本ではまだ採用されていない」と解説。「(一生を)50年(とすると)、生涯線量として年間20ミリが出てきてる」とした上で、「数年間1ミリを超える状況があったとしても、できるだけ速やかに線量を下げる努力をしていけば、ここにいる人よりは、何年かの間に少し余分な被ばくを受けるという意味だ」と述べた。
 
また、参考レベルについては、政府が検討するのではなく、自治体ごとに設定すべきだとの考え方を提示。「除染レベルを1ミリでないと嫌だというところもあるし、飯舘などは当初から5ミリと決めている。」「戻らないかは個人の選択だ。集団としての市町村単位で帰還をどうするか議論されているので、そこはそう言うことで決めてほしい」との見解を示した。
 
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田中委員長は3ヶ月前の今年7月22日の定例記者会見で、参考レベル(被ばく線量の目標値)について「今後、福島県民がどう復興に取り組んでいくかという点で非常に重要な課題」と述べ、国として参考レベルを検討する必要があるとの考えを示していた。
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14市町村のうち、マスコミにフルオープンの取材を認めたのは南相馬市のみ。田中氏は東京電力福島第一原発の廃炉に向けた状況について、「住民の帰還を妨げるような状況ではなくなっている。再臨界は物理的にない」と述べ、安全性を強調した。
 
一方、桜井市長は昨年度、市内のコメの一部で基準値を超える汚染米が見つかった問題で、3号機のガレキ撤去に伴う放射性物質の拡散が影響しているのではないかと指摘。ガレキの拡散による影響を否定している規制員会で原因究明するよう求めたが、田中委員長は「規制庁にはその分野の専門家はいない」と回答し、原因究明は農水省の役割であるとの考えを示した。
 
さらに桜井市は、復興に必要な若い世代が戻っていない現状を訴え、住民の帰還に向けた安全な放射線量の基準を示すよう求めた。しかし田中氏は「被曝については直線モデルという考えがあり、いくらならいいとは言えない」と説明。「国際的には生涯1000ミリという基準がある」とした上で、「住民の考え方で決まってくる」と回答を避けた。
 
これに対し、同席した江口副市長が1ミリと20ミリの間での参考レベルを示して欲しいと言及すると、田中氏は「若いのだから勉強しなさい」「1ミリから20ミリが参考レベルだ」などと江口副市長を叱責した。江口市長の発言には、特に事実誤認はなかった。
 
 
さらに「1ミリと20ミリの間には、随分幅があるので、子どもやお父さんお母さんが別々に生活するわけにはいかないので、子どもの感受性を考えてせいぜい5ミリじゃないかと申し上げたことはあります。」と延べ、今日の会見と180度異なる見解を表明していた。
 
国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告では、原発事故後、一定の汚染がある状況が続く「現存被曝状況」においては、1ミリから20ミリの間のできるだけ下方部分に「参考レベル」を設けるとするとする防護体系があるが、福島原発事故後、日本政府は避難基準を20ミリシーベルトに設定したまま、この参考レベルを設けていない。
 
チェルノブイリ原発事故では事故5年目に年間5ミリシーベルト生涯350ミリシーベルトを強制的な避難基準とし、おおむね年間1ミリ、生涯70ミリのを汚染ゾーンとして指定し、住民全てを被災者として登録。希望者はほかの地域に移住できるほか、健康診断や保養などの支援策が講じられている。
 
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