政府と東京電力は6月、福島第1原発の廃炉に向けた中長期ロードマップ(工程表)を2年ぶりに改定した。原子炉建屋にある燃料貯蔵プールからの燃料取り出しを最長3年遅らせるなど、後ろ向きの内容が目立ち、故郷への帰還を願う福島の住民にマイナスのイメージを与えたかもしれない。事故から4年以上たっても、なぜしっかりとした廃炉工程が定まらないのか。なぜ今になって工程を遅らせなければならなかったのか。その真の理由を探った。(原子力取材班)
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平成23年12月に策定された工程表の改定は、25年6月以来2年ぶり3回目。今回の改定に際し、広瀬社長が「安全の配慮」に言及しなければならなかったほど、これまでは「スピード重視」が優先し、安全への配慮が十分だったかは疑問視される。ただ、福島の住民に早く安心感を持ってもらうためには、廃炉を早期に達成する目標は致し方ない部分もあったことも否めない。
ところが、スピード重視は作業員の負担にもなっていた。
今年1月には、第1原発構内でタンク(高さ約10メートル)の設置作業中に、作業員=当時(55)=が落下し死亡した。第2原発でも機材に頭を挟まれ作業員=同(48)=が死亡したため、原発での全作業をいったん中止。工程を守ることに固執して、逆に工程の遅れを招いた。
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第1原発での作業員は当初3000人程度だったが、汚染水を入れるタンクの増設などで急増し、現在は約7000人が働く。現場の環境変化により、どこにどういったリスクがあるかを見極め、工程を遅らせるのは当然である。
「。。。」それは3号機の燃料貯蔵プールからの燃料取り出しだ。建屋上部にあるプールには燃料が566体あり、それを撤去することはリスクの大幅低減となる。3号機は23年3月の事故時に、水素爆発で建屋が大破した。建屋上部にはがれきが積み上がり、その撤去作業に時間がかかっている。
特に、建屋の除染が難航し、放射線量が思ったより下がらないことが工程にブレーキをかけた。このため燃料取り出しは従来の工程より約30カ月遅らせて29年度からとした。
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1号機にある392体の燃料、2号機にある615体の燃料の取り出しについても、線量低減など追加の安全対策を反映し、開始時期を29年度から32年度に変更している。1号機ではいま、建屋カバーの本格的解体工事に着手している。昨年7月に解体を始める計画だったが、3号機でがれきを撤去した際に放射性物質が飛散した問題があり大幅に遅れていた。
飛散防止剤を散布しながら、建屋の周囲に防風シートを設置し、放射性物質濃度の24時間監視を図るなど、地元の不安を招かないように万全な体制を敷いている。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は会見で、「リスク低減の中でも、燃料をできるだけ早く速やかに地上に降ろすことはかなり最優先事項になっている。3号機のリスクがやはり大きい。まだまだ先の見通しが得られた状況ではないと思う」との見解を述べた。
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