1月15日に伊達市議会議員政策討論会(放射能対策研修会)が開かれフクロウの 会の青木一政と(株)千代田テクノル執行役員線量計測事業本部副本部長佐藤典仁氏が講師としてそれぞれ講演を行いました。同政策討論会は同市議会基本条例 にもとづく公式な会議で市会議員全員が出席する会議です。
この場で、千代田テクノル佐藤氏がガラスバッジは放射線管理区域で使うもので前 方からの照射を前提としているため、福島のような全方向照射では身体による遮蔽効果により約30-40%低くでるとの説明を行いました。福島県内の各自治 体ではガラスバッジによる住民の被ばく量測定を行っていますがこれはガラスバッジの本来の使い方から逸脱したもので、これで住民の被ばく量管理を行うこと は問題であることが明らかになりました。ましてガラスバッジによる測定結果で住民の被ばく量は予測計算より少ないとして除染基準を緩和するような動きは極 めて大きな問題です。
私達はあらためて政府の「個人の被ばく線量重視」「個人線量計による被ばくの自己管理」の動きに対して抗議するとともに、「場の線量」と「個の線量」の二段構えでの住民の被ばく防止の考え方を堅持することを要求します。
伊達市民の働きかけにより実現した今回の放射能対策研修会
伊 達市は市民約5万3千人のガラスバッジ調査で個人線量は十分低いとして、空間線量率が0.3~0.6マイクロSv/h程度でも追加被ばく年1ミリSvは達 成できるとした報告書を2014年8月に発表しています。この調査結果も踏まえ仁志田伊達市長は、従来からの持論である線量の低いCエリアの除染は不要と の立場に固執しており市民からの批判が高まっています。(略)
高橋一由議員が「ガラスバッジは放射線の入射する方向により身体の遮蔽により低 く出るという報告があるが実際のところどうなのか」と重ねて質問したのに対して「ガラスバッジは放射線管理区域で使うもので福島のような全方向照射では 30%低くでることをきちんと考えず配布した」として謝罪の言葉*があり、「事故直後の混乱時期に、安全を売り物にする企業として福島の方々に少しでも役 立てばと思ってガラスバッジを使ったが配慮が足りなかった」との発言がありました。
*たとえば病院でのX線撮影の場合、ガラスバッジを身に付け撮影をする放射線従事者は決まった一点から放射線を受ける可能性があるだけです。フクシマの事故では、環境中に飛び散った放射性物質により、私たちは上下左右、360度からの被ばくを毎日強いられています。目に見えないだけで、地面や屋根、そして大気中浮遊塵や放射性物質が付着した衣類・髪などから外部被ばくをしています。今回の0.6-07倍という値も水平方向で全方向としての計算で、上下方向からの入射を考慮したものではありません。上下方向からの入射を考慮すれば「実効線量と同等だった」(**参照)という千代田テクノルの説明もまだ過小の可能性があります。ガラスバッジで測るやり方が毎日被ばくをしながら暮らさざるを得ない住民の現実感覚からすれば極めて不十分なものです。このような情報を今まで積極的に発信してこなかった千代田テクノルの責任も大きいと考えます。
また菅野善明議員から「30%程度低く出ても検証の結果、実効線量と同等だった という説明**があったが子どもの条件で確認したのか」という質問に対して、「やっていません」「というか実は子どものファントム(検証用の人体模型)を どのようなものとすべきか決まっていない」と率直に認めました。
**実効線量とは個人の臓器毎の被ばく線量を計算しそれに係数をかけ足し合わせたものであり、体格や年齢、性別など個人毎に異なるため実際には個人ごとの実効線量を測定することはできません。そのため実際の測定は実用量として空間線量率を測るサーベイメーターや個人線量を測るガラスバッジ等の個人線量計の値が使われます。個人ごとの実効線量のバラつきを考慮して、実効線量<実用量と いう関係が常に成り立たなければならないということになっています。今回の千代田テクノルの説明では検証の結果、低めに出てしまう全方向照射での測定結果 は実効線量とほぼ同等だった、という説明でした。しかしこの検証は大人の条件でしかやっていなかったことが菅野議員の質問で明らかになったわけです。
問題は個人線量計で被ばくを自己管理させようとする政府・環境省の方針
子 どもを含め住民がこれから長期にわたる被ばく量を管理するための測定として、環境中に放射能が散らばって全方向から放射線が入射するにもかかわらず、前方 からの入射を前提とする放射線業務従事者用のガラスバッジを使うことそのものが大変無謀なことであることが今回の説明から明らかになりました。さらに子どもの被ばく量を検証するためのファントムによるテストは、ファントム そのものがどのようなものにすべきか明確にさだまっておらず、検証テストをやっていないというのは、健康や生命にかかわることですので大きな問題です。ま してガラスバッジの測定結果をもとに住民の被ばく量を推定しそれをもとに除染基準を決めるというのは言語道断です。
全文は【報告】ガラスバッジは福島のような全方向照射では3-4割低めに検出する-(株)千代田テクノルが伊達市議員研修会で公式に説明-