露骨な「原発回帰」である―。
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■2年前の公約どこへ時計の針を、2年前の衆院選に戻す。
当時、政権党だった民主党は公約に「30年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と掲げた。
野党だった自民党も「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」と曖昧な表現ながら脱原発の方向性を打ち出した。
ところがどうだ。政権を取り戻した昨夏の参院選では、規制委の審査で再稼働が認められれば「地元自治体の理解が得られるよう最大限努力する」と後退させた。
そして今春、安定供給を支える「重要なベースロード電源」と位置づけ原発回帰を決定的にした。
その象徴が川内原発である。
規制委は9月に「合格証」を交付した。だが責任者である田中俊一委員長も「安全を保証するものではない」と説明した。
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■再生エネ普及に道を規制委には13原発20基が審査を申請している。北海道電力泊原発は終了の見通しが立っていないが、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)などは審査が進む。
それだけではない。建設中の電源開発の大間原発(青森県)も年内にも審査を申請する構えだ。
原発ゼロでも電力は不足しているとは言えない。なのに火発用の原油、ガスのコストが高騰しているからといって原発を選択する。安易すぎる。
原発に替わる再生可能エネルギーの普及は時代の要請だ。
「今後3年間、再生可能エネルギーの最大限の導入促進を実施」。自民党も参院選公約でそう掲げた。問題は1年を過ぎても具体的な道筋が示されていないことだ。
それがないから電力会社が、再生エネの固定価格買い取り制度に基づく新規電力購入契約を中断するといった混乱が起きている。
確かに太陽光や風力は出力が気象条件に左右される。それを補うには電力会社の垣根を越えて融通し合う仕組みが欠かせない。
当然、新規参入を促すため、送配電網を広く公平に利用できる発送電分離を含めた電力システム改革も進めなければならない。
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