茨城県と福島県の「原発関連企業」が、原発依存を脱却しようと、長年培った技術を応用して異分野の事業を開拓している。これまで原発の施設建設や機器製造、システム管理などに関わってきた企業のほとんどは、東京電力福島第1原発事故以降、全国の原発が停止した影響で収益が大幅に落ち込んだ。今後も原発再稼働が見通せないことから、「いつまでも原発に頼っていられない」と新規ビジネスに業績回復の活路を見いだしている。【土江洋範】
原子炉の定期検査用機器を製造してきた茨城県日立市の「S・P・エンジニアリング」(従業員35人)は昨年末、数社と共同で老化防止や美容などに効果があるとされる水素水の携帯用生成器を開発した。円柱形の容器に入れたアルミニウムと酸化カルシウムの粉末に水を加えて水素をつくり、容器内の圧力を高めて水素を溶かすと、市販の数倍の濃度の水素水が約3分でできる。原子炉内などの圧力調整技術が生きたという。1セット(30回分)を1万5600円で首都圏のドラッグストアなどで販売し、1万セット以上が売れた。
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原発関連企業2258社のうち、2年5カ月後の13年11月には17都府県の計72社が所在不明や倒産、休廃業などで消滅。全国7位の120社あった福島県は消滅数が27社で全国最多で、原発事故による避難区域内に立地していた企業が中心だという。全国各地の原発の配管検査に収益のほぼ全てを依存していた、放射線などの検査会社「東北エックス線」(若林正清社長、従業員12人)は、浪江町にある本社が避難指示解除準備区域に指定され、福島市の仮事務所への移転を余儀なくされた。
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