5日に初来日したトランプ米大統領は、核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮への圧力を強め、軍事行動も否定しない。核の被害に今も苦しむ被爆者、多くの米軍基地を抱える沖縄の人、朝鮮半島にルーツを持つ在日コリアンたちは、さまざまな思いで来日を見つめ、東京都内では日本で暮らす米国人らがデモをして「戦争反対」などと訴えた。
被爆者
広島で被爆した岡田恵美子さん(80)=広島市東区=は「ゴルフをする時間があるなら、広島に来て、72年前にきのこ雲の下で何が起きたのか知ってほしかった」と残念がる。「(核戦力の増強を打ち出す)トランプさんの発言を聞いていると、核兵器の本当の恐ろしさを知らないと感じる」といい、「被爆者は放射線の被害に生涯苦しみ、子供や孫に影響するのではという不安も抱える。自分の身に置き換えて考えてほしい」と訴える。対北朝鮮政策については「対話を望む市民の声に耳を傾ける度量を持ってほしい」と話した。
長崎の被爆者で原水爆禁止日本国民会議議長の川野浩一さん(77)=長崎県長与町=は「核兵器廃絶への思いが全く感じられない。日本が戦争に巻き込まれることへの配慮もない」と指摘する。
沖縄
「トランプさんにはぜひ沖縄に来て、米軍基地の過重負担に悩む県民の思いに触れてほしい」。日米両政府が進める米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設への抗議活動を続けている小橋川共行さん(75)=同県うるま市=は語る。トランプ氏は北朝鮮への軍事的圧力を強めており、「(有事になれば)基地が集中する沖縄が危機にさらされると危惧している。外交努力で解決する糸口を見つけてほしい」と話す。
小橋川さんは、2013年末からオバマ大統領(当時)に沖縄の実態を考えてもらおうと、はがきを約10万通出したが返事はなかった。トランプ氏にもこう呼び掛ける。「米国は民主主義の国。県民の声を聴き、基地を増やさないでほしい」
在日コリアン
大阪市内のホールで5日にあった朝鮮半島の統一を願う文化イベント「第33回ワンコリアフェスティバル」は多くの人でにぎわった。主催団体の共同代表、鄭甲寿(チョン・カプス)さん(63)は「北朝鮮が核にこだわる限り出口は見えないが、トランプ氏の対応は制裁一辺倒だ。もう少し対話の努力をしてほしい」と注文した。
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