「高レベル」だけではない 原発の廃炉ごみ処分地問題 via 日本経済新聞

原子力発電所から出る放射性廃棄物がクローズアップされている。きっかけは国が7月に「核のごみ」の処分地候補となる科学的特性マップを公表したことだ。だが、この対象には入らない、原発を解体した際に出る低レベル放射性廃棄物のほうが実は多い

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■低レベルの処分地は電力会社が決めるルール

科学的特性マップで候補となる処分地に廃棄する核のごみとは、使用済み核燃料を再処理した際に生じる廃液を指す。高レベル放射性廃棄物とも呼ばれる。処分地では、この廃棄物を地下300メートルより深く地中に埋める「地層処分」を採用する。

しかし原発からは高レベル廃棄物とは別に、解体した際に原子炉や建屋のコンクリート、配管などのごみも出る。低レベル放射性廃棄物と呼ばれるこれらも同じ核のごみだ。

大手電力会社でつくる電気事業連合会などによれば、廃炉を決めた商業用原発から出るごみはコンクリートやがれき、使用済み制御棒など。放射能の濃度に応じて高いものからL1、L2、L3と区別される。

低レベルのうち最も汚染度の低いL3廃棄物は、「トレンチ処分」と決められている。地表近くの穴に廃棄物を入れて土で覆い、トレンチの意味通り塹壕(ざんごう)とする。L2は「ピット処分」、L1は「余裕深度処分」と深さと放射能を防護する技術も変わる。

仮に政府が科学的特性マップに基づいて処分地を決めたとしても、それは原発から出るほとんどのごみの問題の解決にはならない。低レベル廃棄物は電力会社などの事業者が決めるすみ分けになっているからだ。

廃炉を決めた原発の現状はどうか。廃炉が最も進んでいる日本原子力発電東海原発(茨城県)。出力16万キロワットの小さな原発だが、臨界は1965年。98年に運転を停止した。原電は東海原発から出る低レベルのL3のごみ約1万6千トンについて敷地内に埋める計画を15年に原子力規制委員会に申請した。

しかし汚染度の高い制御棒や原子炉圧力容器などの処分地は決まっていない。というのも地元の東海村では16年3月に「L1、L2は村内での処分は認めない」と山田修村長が発言しているのだ。放射性廃棄物の処分には原発建設や稼働と同様に地元住民の同意が必要とされている。「(L1、L2の)処分地はまだ検討中。今後は電事連ともよく協議して考えたい」と原電は話している。

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東電福島第1原発事故後、原発への国民的な不信は増幅した。そのため原発のごみ問題を民間事業者だけで解決できるのかという意見もある。経産省の担当者は「高レベル放射性廃棄物は危険性も高いので国が責任を持つことにした。低レベルの廃棄物に関しては高レベルほどリスクが高くないので現状では事業者が責任を持つべきだ」との姿勢だ。

日本の原発は1960年代に稼働してから60年近くもたつ。なぜこれだけの長期間、処分地の問題が先送りされてきたのか。かつてエネルギー基本計画の策定にも携わったこともある元経産省幹部は「当時は原発を始めることが最重要課題。その廃棄物の議論まで机上に載せれば、ますます立地が困難になると考えたのではないか」と推測する。廃炉によるごみは増えるばかり。早急に解決を図らなければ、リプレース(建て替え)などを含めた日本の将来の原発政策に影響を与えることは必至だ。

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