「今も続く苦しみ表すには軽い」~公開されぬアンケート結果を全入手
唐突に設置され、唐突に撤去された巨大モニュメント「サン・チャイルド」が浮き彫りにしたのは「市民の分断」ではなく、決して一言では語り尽くせない、原発事故から90カ月を経た現状に対する十人十色の多様な捉え方。そして市民感情を無視した木幡浩市長の〝独り相撲〟への怒り、税金の使途に対する疑問だった─。本紙は、福島市の情報公開制度を使ってアンケート用紙に書き込まれた直筆の意見を全て入手した。設置してしまった後に実施されたアンケート(無記名)。回答は110通に達したものの、福島市民に具体的中身が公開される事は無い。長くなるが、なるべく多くの意見を紹介したい。市民はなぜ、巨大モニュメントを拒んだのか。
【20代「議会で納得いく説明を」】
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「これまで普通に福島市内に居住してきた者の心情を害すると思われる。風評を増長し、さらなる誤解につながると思われる」(20代男性)
「市長や市議会は、(設置に関与した)一般財団法人への責任追及を強めるべき。百歩譲ってヤノベケンジ氏の作品を推すにしても、別の作品でも良かったのではないか」(20代男性)
「核実験時代のプルトニウムも自然界にある放射能もあるのに、その事実を知らない人が見た場合『ゼロ以外は危険』と思われてしまいます」(20代女性)
「設置に反対します。震災の記憶を思い出す事がつらい方がたくさんいます。アンケートを書きたくても来られない方もたくさんいます。ここ数日の市長の発言にはがっかりしています。市民は見ています。福島市の『こむこむ』にサン・チャイルドはふさわしくありません」(30代女性)
「なぜ市民の意見も聴かずにあんなものを設置したのか理解に苦しみます。防護服など震災後も必要としていなかったにもかかわらず、なぜそれを設置しなければいけないのですか?まして子どもの施設に?少しでも早くあの像をなくしてくれることを望みます。子どもが夢をはぐくむ施設なら、政治的なもの個人的な意見や主義主張が色濃く出るものを置くべきでは無いと思います」(30代女性)
「撤去する必要性は全く感じない。継続して設置して良いと思う。風評被害を呼ぶとか非科学的だとかいう意見もあるが、それは考えすぎだと思う」(30代男性)
[…]【40代「今も被曝リスクと戦っている」】
「この7年半の間、放射線による被曝リスクに不安を持ちながら子育てしています。事故後は他県に母子避難をしていました。家庭の事情もあり福島に戻って来た今でも、不安と戦いながら生活をしています。市長には、この不安の大きさがどれだけつらいものか想像できないのでしょう。風化させないためとおっしゃっていますが、あの事故・震災を経験した私たち当事者が忘れることはありません。むしろ忘れているのは国、行政、東電ではないでしょうか。『この像が風評加害となる』との意見が多く聴かれますが、私はその意見とは異なります。今も続くこの心の苦しみを語るのに、この像はあまりにも軽すぎます」(40代女性)
「福島=放射能=防護服という表し方はどうかと思う」(40代女性)
「忘れたくても忘れられない現在の状況をつきつけられるようで、つらい。元気をもらっている人がいるのかと思うと、またつらい」(40代女性)
「福島を『フクシマ』として、自らの主義主張のためには福島県民、福島市民を風評被害の犠牲者でいて欲しい勢力の存在が見えてきます。そういう政治利用のために与するのは面白くありません」(40代男性)
「ヤノベさんの意図する想いを知らずに、見た目だけで反対している人が多いと思います。福島市に来て3年ですが、復興の象徴のモニュメントとしてふさわしいと思います」(40代女性)
「宇宙服か原発事故の服か分からないが、後者にしか見えない。福島県外の作者が馬鹿にしているように見える」(40代女性)
「『ふくしま未来研究会』の連中を許さない。民事訴追して罰してください」(40代男性)[…]
【60代「ようやく平穏を取り戻せたのに…」】
「これ以上、市民対市長という対立を深めないためにも、やはりサン・チャイルドはお返しするのがいいと思います」(60代女性)
「ようやく平穏な日常を取り戻せた矢先に、誤解や新たな混乱を招くようなものを設置すべきではないと思います」(60代男性)
「こういう服装の子どもが福島市はもとより、福島県内にいたことはありません。1人も!」(60代女性)
「痛々しい感じがして良い気持ちではないです」(60代女性)
「アンケート用紙を各所に置いたら良い。このアンケート用紙をボードか何かに貼って公開したら良いと思う」(60代女性)
「防護服がなくては住めない町なのかと誤解されそうです」(60代女性)
「忘れかけた記憶を戻すことはないので、ここに設置することは反対です」(60代女性)
「非常に不快。県知事が海外に行って県産品のPRをしていることを否定しているようだ」(60代女性)[…]