特集―福島原発事故7年(1)via 人民新聞

7年続く緊急事態宣言 大事故招く原発再稼働 小出裕章さん(元・京都大学原子炉実験所助教授)インタビュー

福島原発事故から7年。放射能放出は今も続くが、国は全て覆い隠し原発再稼働や避難区域の解除を続けている。元京大助教授の小出さんに全体状況と問題点を聞いた。また福島の状況や関東の放射性廃棄物、台湾での福島復興宣伝の問題などもお伝えする。(聞き手:山田)

汚染水と炉心取り出しが最大の問題

問題を大きく分けると、敷地の内と人々が住んでいる外の二つです。敷地内はさらに(1)汚染水の問題と、(2)熔け落ちた炉心の取り出しの問題に分けられます。

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汚染水を貯めるタンクは既に1000機近くにのぼり、汚染水は100万トンにまで達しています。敷地にも限りがあり、タンクを作る余地すらなくなりつつあります。東電は汚染水処理技術で放射性物質を除去しようとしていますが、トリチウムという放射性物質は、この処理技術で取り除くことは絶対にできません。このトリチウムを含んだ汚染水は既に80万トンあり、東電は近い将来「海に流す」と言い出すでしょう。

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もう一つの問題は、どこにあるかすらわからない膨大な放射能を抱えた炉心です。しかし国と東電が制作したロードマップでは、40年ほどの間に炉心を見つけ出し容器に封入すると書かれています。仮にうまく炉心を容器に入れられたとしても放射能が消えるわけではありません。何十万年と保管し続ける必要があるので、炉心回収が事故の収束であるはずがないですが、彼らはそれを収束だと言っています。
さらに、そもそも炉心の回収はできません。ロードマップで東電は、炉心は圧力容器の真下に饅頭のように堆積していると想定していましたが、私は有り得ないと言い続けてきました。熔けた炉心は圧力容器から飛び散り、格納容器という放射能を閉じ込める最後の防壁として設計された容器の中、あるいはそこからも飛び出して分散しています。このことは昨年、2号機の中にカメラを差し込み調べたときに裏付けられました。このため東電は、ロードマップを書き換えましたが、近い将来に「炉心の取り出しを諦める」と言い出すでしょう。

次に(2)敷地外です。最初に指摘したいのは、7年前に発令された「原子力緊急事態宣言」が今も解除されていないことです。この宣言により、年間で1mSv以上の被ばくを禁止するという法律は停止されました。

放射性物質はとても危険なので、取り扱うのは放射線管理区域だけです。かつての私のように、放射線業務従事者と呼ばれる人だけが入ることができ、飲食や排泄もできない特殊な場所です。

しかし今、福島を中心に本来ならば放射線管理区域に指定しなければならないほど汚染された場所が広大に存在し、普通の人々が生活しています。

汚染の主要因であるセシウム137という放射性物質は、100年で10分の1まで減りますが、それでも放射線管理区域の基準を超える広大な地域が残ります。除染作業が続けられていますが、実態は汚染を別の場所に移す「移染」という作業でしかありません。それも範囲は住宅地や校庭だけで、広大な山林や田畑には行わず、汚染が残り続けるので、緊急事態宣言は100年経っても解除できないのです。

復興を叫ぶより被ばくから守る

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福島では「何よりも復興だ」と皆さん言っています。「福島を守ろう」というポスターがあちこちに貼ってあり、私が「何から守るのですか?」と聞くと、「風評被害からだ」と言うのです。しかし、福島を中心に広大な大地が「事実」として汚れているのです。風評からではなく被ばくから住民を守るべきですが、国は緊急事態宣言により人々を被ばくさせ続けています。

復興への気持ちはわかりますが、それは赤ん坊や子どもも含めて被ばくさせてしまうことになるのです。今は復興を叫ぶより、まず人々の被ばくを軽減すべきだと思います。

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