福島の除染なお課題 帰還困難区域、対象は一部 via 日本経済新聞

 東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う福島県富岡町の帰還困難区域で、ようやく除染作業が進み始めた。2023年春の完了を目指すが、復興にはなお課題が横たわる。国は除染する範囲を限定しており、区域内は帰還開始時期のめどがついた地域と、そうでない地域に二分されているからだ。町は全域の除染を強く求めており、国の対応が今後問われる。

7月上旬、富岡町のJR常磐線・夜ノ森駅周辺や国道6号線沿いなどで除染作業が始まった。帰還困難区域内の除染開始は双葉、大熊、浪江各町に続き4町目。ただ、除染対象となるのは「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」の中だけだ。

富岡町の復興拠点計画は約390ヘクタールで、帰還困難区域の約45%。計画では常磐線が全線開通する20年3月に同駅周辺、ほかは23年春をめどに除染を終え、約1600人の居住をめざす。

帰還困難区域のほぼ中央を南北に縦断する国道6号線の西側は全体が復興拠点に入る。一方で東側の小良ヶ浜、深谷の2地区は外れた。原発事故前の区域内住民は約4800人。うち2地区の約8百人は、今のままだと23年以降も戻れない。

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2地区には中間貯蔵施設に搬出予定の除染廃棄物の仮置き場があり、復興拠点の除染で出る廃棄物も搬入される。「地区内に除染廃棄物がある以上、居住は現実的でなかった」。国と交渉した町企画課長の原田徳仁さん(48)は、苦渋の表情で全域同時の除染と避難指示解除を断念した理由を説明する。

復興拠点の内外を分ける場所を原田さんが案内してくれた。避難指示から7年余り、草に埋もれてしまった小道が境界線だ。放射線量を測ると拠点側が毎時約2マイクロシーベルト、拠点外は同1マイクロシーベルト未満。町の測定でも現時点では最大で同3マイクロシーベルトという。内外とも除染作業はできる水準だ。

「線量が高く、作業員の被曝(ひばく)問題があるなどとして国は帰還困難区域の除染をしないままにしてきたが、時間の経過で線量は下がっている」と原田さん。

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富岡町以外も含む帰還困難区域全体のうち、国が認定した復興拠点の面積は8%。だが古里に戻ることを望み、「帰還困難」という名称にすら疑問を持つ住民は多い。復興拠点の境界の先に、除染されていない地域が広く残れば、帰還した人々にとっても不安要因となる。

被災者に寄り添うならば、人の暮らしのあった地の除染は今後広げていくべきだ。

(小林隆)

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