核のごみ処分 道筋を根本から問い直せ via 信濃毎日

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経済産業省と原子力発電環境整備機構(NUMO)が、建設に向けた意見交換会を全国各地で開催している。7日には長野市内でも開かれた。

<現状の責任認めよ>

「まず原発を止めて、これ以上ごみが出ないようにしてから処分場を提案するべきだ」「都合の悪いことは隠しているのでは」―。参加者からは、厳しい意見や疑問が相次いだ。経産省とNUMOはどう受け止めたのか。不信に正面から向き合えないようでは事態は進まない。

反省するべき点は反省し、将来性が低い事業は難しさを包み隠さず説明する姿勢が必要だ。

意見交換会を「国民に説明した」というアリバイに使うのではなく、核のごみの処分に向け、政府と国民がともに考える第一歩にしなければならない。

原発は専門性が高く、国民が理解するのは簡単ではない。一から分かりやすい言葉で説明することが欠かせない。

経産省とNUMOは意見交換会でまず地層処分の方法や処分地の選び方を説明し、その後に放射線や地震のリスクを話している。

これで理解が得られるのか。

まず説明が必要なのは、核のごみが大量にたまった理由である。そして、処分する責任の所在だ。

原発は「トイレのないマンション」と言われてきた。それは54年前に発電が始まった当初から、核のごみを処分する方法が決まっていなかったためである。

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事業の開始時に廃棄物の処分方法を決めるのは、事業者の責任である。国と電力会社はそれを果たさないまま原発を始め、事態を放置してきた。その結果、日本には行き場のない核のごみがあふれる事態となった。

<破綻した計画が前提>

これは国と電力会社の取り返しのつかないミスだ。まず、そのことを国民の前で認めるべきだ。

さらに責任の所在である。経産省とNUMOは意見交換会でこう話す。「日本は原発の電力を使って経済発展し、国民は豊かな生活を享受してきた。だから処分するのは世代の責任だ」と。無計画に無責任に進めてきたことを棚に上げ、国民に責任を押しつける。これでは反発を招くだけだ。

処分計画の前提も危うい。

「。。。」計画では、核のごみを高温のガラスに溶かしステンレス製の容器に流し込んで固める。最終処分はガラス固化体を人間への影響がなくなるまで地下深くに保管する。

意見交換会では、これを前提に説明が進む。

問題はすでに核燃料サイクルが破綻していることだ。

取り出したプルトニウムなどを加工した燃料(MOX燃料)を使うはずだった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)は、廃炉が決まっている。

一般原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電も、使用済みMOX燃料の処理方法が決まらない根本的な問題を抱える。このまま進めると、「トイレのないマンション」が増殖するだけである。

日本がためこむ行き場のないプルトニウムは2016年末時点で約47トンに及ぶ。核爆弾換算で約6千発分になり、世界の保有量の1割弱を占める。安全保障の観点から世界の視線は厳しい。

核燃料サイクルを今後、何年も続けられる環境にはない。使用済み核燃料を含めた最終処分の方法も再検討する必要が出てくる。

<最終量の確定が必要>

現在も増え続ける核のごみ。最終処分に向けた道筋を、少しでも早く付ける必要がある。そのために何が求められるのか。

まず原発をあと何年、何基運転するか決め、核のごみの最終的な量を確定することだ。さらにこの事態を招いた責任を明らかにして、再処理なしでも可能な技術的な処分方法を示すべきだ。ためこんだプルトニウムの処分方法も研究しなければならない。

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