東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間は原則40年と定められ、今後、全国各地の原発で廃炉が増えるとみられる。電力各社は拡大する廃炉ビジネスの経済効果を強調するが、地元への波及は読めない上、定まらない放射性廃棄物の行方を懸念する見方は根強い。廃炉作業が7月に始まった中国電力島根原発1号機(松江市)を訪ね、廃炉の今と地域の思いを探った。(報道部・高橋鉄男)
建屋内の燃料プールで、核燃料を回収する準備が進む。運転状況を示すボードには「運転終了」の紙が張られていた。
「まだ作業員の被ばくを抑える放射能汚染マップを作製している段階。30年かかる廃炉作業が始まったばかりです」。中国電の担当者が説明する。島根1号機は1974年に運転開始した沸騰水型軽水炉(BWR)。2010年に発覚した点検不備で停止したままだった。原発事故後に規定された「40年ルール」を延長するには安全対策に膨大な費用が見込まれ、廃炉が決まった。
廃炉作業の施設解体で生じる原子炉内の構造物や圧力容器などの「低レベル放射性廃棄物」は、各電力会社が埋設処分地を見つけなければならない。
島根1号機の場合、廃炉作業で生じる廃棄物計18万トンのうち、低レベル放射性廃棄物は約6000トン。中国電は「他の電力会社と連携して廃棄したい」との方針を示す。ただ処分地探しは難航必至で、廃炉工程が遅れる事態も危惧される。
原発から2.8キロに自宅があり、脱原発の市民運動に携わる農業安達進さん(64)は「廃炉は歓迎だが、核燃料や汚染廃棄物がいつまで留め置かれるのだろうか」と懸念する。[…]