「官邸や自分に不利なことも正直に話す」 寺田学・元首相補佐官が語る東日本大震災の15日間【8/8】via the Huffington Post

2011年3月11日。寺田学氏は、菅直人首相(当時)の下、首相補佐官として東日本大震災を経験した。突然、福島県に乗り込んだ菅・元 首相。緊迫した状況で右往左往する政治家たち。「自分や官邸関係者には不利なこともありますが、それでも正直に記すことが被害に遭われた方や未来の方々へ の微かな誠意と思っております」と語る寺田氏の証言を8回にわたってハフポスト日本版でお届けします。(寺田氏が2013年に書いたものを加筆修正し、3月に公開したブログです。また本人が、事故調査委員会に証言した話に加え、聞かれなかった内容も含まれています。)

(略)

<SPEEDI スピーディ>

その存在を、私が最初に知ったのはTwitterだった。福山副長官も同様だったはず。

「Twitterでスピーディってのがあるって情報、多いですよね?」そんな話を福山副長官とした。
「班目委員長に聞いてみないとな。」

総理は福島社民党党首から教えてもらったと言っていた。「スピーディという放射能拡散予想装置?があるらしい」そんな朧げな情報。
直ちに班目原子力安全委員長に聞く。「スピーディってのがあるらしいが。」

すると、班目委員長からは、「ありますよ、でも今は役にはたちません。実際にどれぐらい放射性物質が放出量が解らなければ、拡散予想が出来ないんです。だから、いまは使えません。いま原発からどれぐらい放出されたわかりませんもん。」と、一笑にふされた。
何度も聞いた。私からも、総理からも、福山副長官からも。全て同じ答えだったらしい。

日時は、自衛隊ヘリによる放水後だったから、早くても 3月17日以降。既に原発が3度も爆発した遥か後のこと。実際は事故当初から、スピーディを所有している文科省の関係団体が使用していたと、後の報道で知 る。一号機の爆発の時、官邸はスピーディ情報を隠していたと言われるが、実態は以上の通り。隠す情報すらなかった。なにより、この手の情報が、避難の実務 的な陣頭指揮をとる伊藤危機管理監にすら入っていなかった。政治が隠した、のでもなく、役所機構のトップが隠したのでもなく、そもそも官邸に情報が入らな かった。

住民の避難に関して、政治側は「避難させるかどうか」の大局を判断し、行政側(主に警察、危機管理センター)は「どのように、どこ に避難させるか」の実務的な判断する。その行政側のトップが危機管理監なのだが、伊藤危機管理監にも情報が入っていなかった。文科省で止まっていたのだろ う。そもそも、文科省が所管している事自体、おかしい。官邸にあげるべき情報か否かの判断すら出来なかったのだろうか。これも縦割り行政、縄張り行政の悪 弊。

(略)

<20ミリシーベルト問題>

3月の月末あたり。
小佐古教授が、党所属議員の推挙で内閣府参与になった。私は初対面。総理も初対面。大衆被爆の専門ということで、助言を受ける事に。

その小佐古教授はテレビで、一般公衆の線量限度を「一ミリシーベルト以下にすべき」と泣きながら会見をした人。当時、国は20ミリシーベルトを基準と決定していた。

ここでの記憶を数点。

ま ず、小佐古教授。官邸で避難地域の拡大が議論されていた時に、「そんなに拡大しなくていい」と一番反対していたのが小佐古教授だった。班目委員長らが拡大 必要という路線で議論し、総理に報告に来た時に、参与として小佐古教授が同席していた。まさしく、参与としてセカンドオピニオンを述べる為に。

班目委員長が避難地域拡大の必要性を訴えた時に、小佐古教授は猛烈に、そして感情的に反対していた。(私は別件で隣室の秘書官室で仕事をしていたところ、会議に同席していた秘書官から「寺田補佐官、何とかしてください、、、」と急遽呼ばれて途中から参加した)

(略)

大げんかは終了。その小佐古教授、これほど避難地域の拡大に反対していた人が、数日後、テレビの前で国の20ミリシーベルト基準を批判し涙を流していた。何がなんだかわからなかった。この20ミリシーベルト問題、一度福山副長官に聞いた。何とか出来ないか、と。
すると「いやぁ、したいんだけど、知事が相当嫌がってるんだ。人口が減る、福島が無くなるからと言って。地元の了解なしに政府が決めても実効性が乏しいんだ」。

全文は「官邸や自分に不利なことも正直に話す」 寺田学・元首相補佐官が語る東日本大震災の15日間【8/8】

(2016年3月11日「寺田学のオフィシャルウェブサイト マナブドットジェーピー [ Manabu.jp ]」より転載)

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