「何のために生きているのか」。先の見えない暮らしを考えると、気持ちが沈む。東京電力福島第1原発事故で福島県双葉郡から避難した女性(57)は、同県いわき市に一軒家を購入した。元手は東電からの賠償金。だが、仕事はない。近くに友人もいない。自宅で1人、昼間から日本酒をあおって気を紛らわせる。毎日がその繰り返しだ。「酒でも飲まないとやってられない」
畜産を営んでいた。ストレスが多かった仮設住宅を約2年前に出た。新たなつながりを求めて職を探したが見つからない。賠償金で生活には困らない。自宅に籠もりがちになり、今は心療内科に通う。「国や東電、役場は自立しろと言うが、具体的には何もしてくれない」。いつか故郷に帰りたいが、自立さえままならないのが現状だ。
「この年じゃ仕事はない。もう少し若けりゃ違うんだろうけど…」。同県双葉町の菅本章二さんは2月、埼玉県加須市の借り上げ住宅で還暦を迎えた。故郷ではコメ作りをしていたが、現在の生活費は賠償金頼み。
この状況が良いとは思わないが「自立を促されても無理」というのが正直なところだ。除染の仕事をするか迷っている知人もいる。ただ、菅本さんにその選択肢はない。「わざわざ避難したのに除染に行ったら意味がない」。生活を切り詰めながら、年金がもらえる年齢になるのを待つ。原発事故さえなければ、こうした生活に追い込まれることはなかった。
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