福島県が2011年10月から行っている甲状腺検査で、甲状腺がんまたはその疑いがあると診断された子どもは127人にまで増加した(2015年3月末現在)。
増加ぶりは、その数が104人だった時点で、東京電力福島第一原発事故前の61倍(*1)。その倍数はその後も増え続けていることは環境省の北島智子環境保健部長も国会で認めている(*2)。本来なら、汚染地域からの避難や移住の権利、医療補償制度が確立されるべき時期である。
ところが、国は汚染地域の放射線の「線量が発災時と比べ大幅に低減し、避難する状況にはない」と、真逆の判断で帰還を促進す方針へ向かっている(*3)。「結論づけることはできない」と先延ばし
これは「福島県県民健康調査検討委員会甲状腺検査評価部会」(部会長:清水一雄・日本甲状腺外科学会前理事長)が今年5月に行った「中間とりまとめ」で、 「検査にて発見された甲状腺がんが被ばくによるものかどうかを結論づけることはできない」(*4)と結論を先延ばししたことと無関係ではない。一方、「影響は否定できない」と警告し続けてきた疫学の専門家がいる。岡山大学の津田敏秀・環境生命科学研究科教授である。福島県内を6地域に分けて行っ た地域差の分析をもとに、妊婦、乳児、幼児、児童・生徒、妊娠可能な女性など優先順位をつけて、少しでも線量の低いところに避難させるよう、かねてから提 案を行ってきた(*5)。
全文は子どもたちの甲状腺は大丈夫なのかIII 福島の子どもの甲状腺がんは事故前の60倍超/ 判断材料示さず帰還を促進する国
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