(抜粋)
例えば、原発から民家までの最短距離は700m【註1】だそうですが「そりゃ、桁が2つ違うだろう」と、思わず突っ込んでしまいました。
また、電車が脱線すれば多くの人が大怪我をするし、墜落すればほぼ全員が死亡するような旅客機が、なぜ空を飛ぶことを許されているのだろうかと。
皆さんが「安全」から想起するイメージは、恐らく、「危険がなく心が安らかな状態」であると思います。ところが、今回調べてみて驚いたのですが、 「工学的アプローチから規定される安全」と「心が安らかな状態の安全」の間では、天と地ほどの差があるのです。それどころか、「工学的アプローチから規定 される安全」とは、我々の寿命から逆算されて導かれているようなのです。
(中略)
そもそも、特許庁が原子炉の発明に対して特許権の付与を拒絶していますし、裁判所もその判断を支持しています【註2】。
これが、「原子力エネルギー発生装置事件」です。「原子炉特許第1号」という名の著名な発明で、発明者はあの「キュリー夫人」の長女ほか2名です
判決の理由は、以下のとおり明快です。
・本発明の原子炉は、エネルギーを取り出せるけど、安全に停止させることができないじゃないか?
・こんな不完全で危ない発明に、特許を与えられる?
・我が国では、安全に止めることのできない発明は、「産業上利用できない発明」とされている。つまり、「原子炉の発明」は、我が国の特許法に基づき、行政と司法当局により特許発明とすることを拒絶され、未完成発明と認定されているのです。
(中略)
ALARAの原則とは、「AS Low As Reasonable Achievable」の略で、「合理的に可能な限り低く」の意味で、特に原発関係では「被ばく量の低減」の意味で使われることが多いです。 問題は、この「Reasonable=合理的」の解釈です。それには、諸説あるようですが、概ね3つの要素で形成されているように思います。
1つ目は、危険度(リスク)。
これは危険の発生する確率と言ってもよいかもしれません。「3日に1度死亡事故を起こす電車」は論外としても、「100年に1度」と言われた場合はどうでしょうか? これについては、SILのところで詳解します。
2つ目は、費用対効果(コスト)。
先ほど説明した「南シナ海で台風が発生した時点で電車を止める」では、鉄道会社が業務を実施する意義が見いだせず、鉄道サービスそのものが成立しません(=公共性の問題)。また、隣駅まで1000円かかれば、誰も電車を使わなくなるでしょう(=経済性の問題)。
3つ目は、倫理(モラル)。
「放射性物質はバラまかれたけど、現時点で誰も死んでないじゃんか」→「だから原発は安全なんだよ」という理屈が成立しないのは言うまでもありません。現 時点でリスクを計算ができないものを「安全サイド」に倒すというのは、まさにモラルに反しています。「わからない」なら、「危険サイド」に倒しておく、と いう考え方こそがモラルにかなっていると言えます。
簡単にまとめますと、
・合理的=リスク+コスト+モラル
と記述できると思います。
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