【80カ月目の浪江町はいま】二本松市で最後の十日市祭 via 民の声新聞

福島県浪江町の伝統行事「十日市祭」を巡り、町民の苦悩と葛藤が深まっている。今月25、26の両日、原発事故後初めて十日市祭が町内開催されるが、「歓迎」と「時期尚早」とで町民の意見は分かれる。12日には、原発事故で多くの町民を受け入れた二本松市で最後の「十日市祭」が規模を大幅に縮小して開かれたが、ある町民は「孫を連れて行かれない」と表情を曇らせた。帰町が進まない中、イベントで対外的に〝復興〟をアピールしたい馬場町長と拙速な〝復興〟を疑問視する町民。被曝リスクだけではない、原発事故が浪江町に残した爪痕はあまりにも深い。

【「なぜ町内開催にこだわる?」】
「孫は連れて行かないよ。私は行くけどね。放射線の事もあるし、何より原発に何があるか分からないでしょ。すぐに逃げなきゃならないような事態が起きるかも知れない所に孫を行かせる事は出来ないよね。風向き次第では再び被曝してしまう。何も無理して向こう(浪江町)でやらなくても良いのにね」

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【帰町の起爆剤にしたい思惑】
十日市祭を〝復興のシンボル〟にしたい浪江町としては、7年ぶりに町で開催される十日市祭を盛り上げる必要がある。馬場町長は今月7日、動画サイト「YouTube」の「なみえチャンネル」に「ふるさと浪江町での十日市祭を楽しんでいただきたい。ぜひお越しください」とのメッセージを寄せた。馬場町長は昨年、まだ避難指示解除が正式に決まっていない段階で「来年はぜひ十日市祭を町内で開催したい」と語っていた。
浪江町は今年3月31日に帰還困難区域を除く避難指示が解除されたが、町ホームページによると、避難指示の部分解除から7カ月が経った10月末現在、町へに戻った町民は237人にとどまっている。帰町率としては、1%をわずかに上回る程度だ。町は旧浪江東中学校を改修し、新たに「なみえ創成小学校」「なみえ創成中学校」を2018年4月に開校する。しかし今年6月に町教委が実施した意向調査では、対象となる年齢の子どもがいる保護者のうち、実に95.2%が「現在のところ通学させる考えがない」と回答している。それだけに、イベントを帰町促進の起爆剤にしたい思惑がある。町商工会内部では当初、町内での開催に否定的な意見が少なくなかったが、関係者は「馬場町長からの強い要請があった」と明かす。
町の姿勢は広報にも如実に表れた。町内での十日市祭を派手にPRする一方で、この日の〝最後の〟十日市祭は、広報なみえ9月号で小さく告知されただけ。訪れた町民から「なぜ差別するのか。両方同じように宣伝すれば良いのに」との声があがったほどだ。40代の母親は「今年は盛大に感謝祭を二本松でやって、来年から向こう(浪江町)で再開するものだと考えていたのに寂しい。残念です」と話した。なぜそんなに急ぐのか。別の町民は言う。「2020年の東京五輪までに〝復興〟させたいんだろ」。

 

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