電力狙ったハゲタカ 真山仁さんが語る原発への問題提起 via 朝日新聞

 2011年の原発事故と大手電力会社の経営を題材にした小説「ハゲタカ」シリーズの第5作「シンドローム」が、このほど講談社から出版されました。作者の真山仁さん(56)が朝日新聞のインタビューに応じ、執筆の動機や、日本のエネルギー政策への考え方などを語ってくれました。

(略)

やりたい放題、だからおいしい

――買収の標的となる電力会社「首都電力」は、実在の東京電力を思い起こすのですが、その会長を相当な悪者として描きました。

「ハゲタカの読者は、主人公を『正義の味方』のように思ってくださっています。おのずとカウンターパートはヒール(悪役)になります」

――電力会社はかつて、地域の電力供給を独占し、コストを自動的に上乗せする「総括原価方式」に守られていました。

「ライバルがいない、コストが上がれば(電気料金に)のせる。やりたい放題。だから『ハゲタカ』にとっておいしい企業ですよ。関係者への取材では、買いたければどうぞ、と言われました。ただ、実際には、賠償など事故の負担があるので誰も手をつけなかったわけですが」

――作中では国の責任も問うています。

「はい。電力会社だけが悪いのか、と。私は国の責任も大きいと考えています。軽はずみな発言はできませんが、海水注入の局面などでは国家権力を使うべきだったのではないでしょうか。そもそも国内に原発を50基以上も抱える原発大国なのに、なぜ事故に対応する手法・組織がなかったのか。大きなショックです。好きな言葉ではないですが、まるで『平和ぼけ』です」

問答無用の「原発反対」には違和感

――原発に対する個人としての考えは?

「私は原発に反対と言ったことはありません。(電気に囲まれた)豊かさの中で生きてきた人が、その豊かさを手放すつもりがないのに、一度の事故で問答無用で『反対だ』というのは違和感があります。国民だって大なり小なり、事故の『共犯者』だったのではないでしょうか」

「だからこそ、議論が必要です。大量の電気を使うリニアモーターカーは必要なのでしょうか。AI(人工知能)社会では、もっと電気を使うことにならないかどうか。一方で、私たちはどれだけ節電しないといけないのか。電力についてしっかり考えないといけない」

――実際の原発事故では、電源車を手配したもののプラグとケーブルが合わないなど信じられないミスがありました。原発を本当に安全に動かしていけるのでしょうか。

「その問いを私もずっと持っています。でも世界中で原発は動いているわけで、日本でもまた動いている。仮に日本の原発を全部止めて火力発電を動かせば、二酸化炭素(CO2)の出しすぎでペナルティーを科せられるかもしれない。どこかで紛争が起きて石油が暴騰した時に支払いができるのか、そういったシミュレートもできていない。もろもろの問題提起をし直さないといけませんね」

全文は電力狙ったハゲタカ 真山仁さんが語る原発への問題提起 

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