東京電力福島第一原発から30キロ圏にある福島県立ふたば未来学園高校(同県広野町)の演劇部が4日、事故後の学校生活を描いた創作劇「数直線」を東京都品川区の小劇場で上演した。脚本、構成ともに生徒たちの自作。演出を担当した2年の佐藤美羽(みう)さん(17)は「震災も原発事故もまだ終わっていない」と話す。
主人公は、東京からふたば未来学園高校へ入学したサクラ。東京で避難生活を経験した同級生がいじめに遭ったことや、故郷に帰れない現実を知り「私に何ができるだろう」と思い悩む。
「ここに、線を引きます」。サクラは、二〇一一年三月十一日を原点とした直線を舞台に引き「皆さんは今、どこにいますか」と出演する生徒たちに問う。「今」の一七年で足を止める子、震災の日から動けない子…さまざまな立ち位置が、事故後の現実をどう受け止めてきたかを映し出す。
せりふも印象的で「(福島のことは)たにんごとなの?」「震災があってから、作り笑いをするようになりました」など、実体験や生の言葉が基になっている。出演した二年の日下(くさか)雄太さん(17)は「この劇を『自分事』として演じられるのは僕らしかいない」。
終演後は、同校で演劇を指導する劇作家の平田オリザさんも登壇し「震災後、何かで線を引いたり数値化したりしなきゃいけなかった世界を、うまく立体化した」と講評。
東京都出身でサクラを演じた一年松田咲良(さくら)さん(16)は「福島について考える機会はないでしょうが、今日は考えてください」と呼び掛けた。
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