高濃度放射能汚染物である指定廃棄物が横浜市の小中学校に保管・放置されていた事実が、6月21日付神奈川新聞が1面トップで報道し、神奈川県全域で大問題となった。同紙は、『指定廃棄物を学校に“放置” 横浜市、5年以上も』と見出しをつけ、次のように報道した。
「2011年3月の東京電力福島第1原発事故によって放射性物質に汚染された『指定廃棄物』が、横浜市の市立小中学校など17校に合計3トン置かれたままになっている。指定廃棄物は1キロ当たりの放射性セシウム濃度8000ベクレル超で、汚染濃度が高く、処理の責任は政府にある。ところが、処理法や場所が決まらず、同市が5年以上も『暫定管理』している。指定廃棄物を公立校に置いているケースは全国になく、専門家は『環境省の怠慢。一日も早く教育現場から撤去すべきだ』と指摘している」(松島佳子記者)
その後、学校に保管されていたのは、国が処理責任を持つ「1キログラム当たり8000ベクレル」を超える指定廃棄物だけではなく、同3000ベクレルを超える廃棄物を含めると汚染廃棄物だけで約10トン、それに校庭や園庭の除染処理に伴って掻き出した高濃度の除染土壌も、小中学校や保育園に保管されていたことがわかった。
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広島、長崎、チェルノブイリでの被ばく問題を追跡し、福島県における甲状腺がんの多発問題に新たな提案をするゴフマン研究会のジャーナリスト・蔵田計成氏は、「放射線被ばくは、現世代に対し、限りなく反生命体的な毒性作用を持っている」「遺伝子を損傷するため、生殖細胞の損傷が世代を超えて伝達される。若い命があふれる校庭や園庭の敷地内に放置することは、無神経な蛮行であり、行政が犯した犯罪行為と言える」と語り、驚きを隠さない。しかし9月になり、早く学校・保育園から撤去したいという市民の願いは、横浜市、同様に除染土壌を保管していた横須賀市で実現しつつある。
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そこで横浜市が測定したところ、現行の基準100ベクレルの数十倍、数千ベクレルを超える学校が43校もあり、その内17校は、放射性物質汚染対処特措法(註1、以下:特措法)による暫定基準値8000ベクレルを超え、国(環境省)が処理責任を負うことになった。ところが、環境省は、その指定廃棄物を「処理体制が整うまでの間は、施設管理者に保管をお願いせざるを得ない」と伝え、横浜市では各学校施設内のポンプ室や倉庫などに、放射性廃棄物の保管を続けることになった。今年5月にも、環境省は「処分の見通しが立っていない」と説明し、保管の継続を横浜市に頼んでいた。
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泉田裕彦新潟県知事は、放射能汚染の恐れがある災害がれきが全国の市町村に運ばれ、焼却によって汚染濃縮された焼却灰が各地の処分場に埋め立てられることに対して、「日本は、全国の処分場を核廃棄物の処分場にするのか」と批判した。
しかし今回の問題は、それに輪をかけてひどい。「日本は、全国の学校や保育園を核廃棄物の保管所にしている」のである。実態が公けとなり、保護者を中心とした市民や市議会議員が抗議の声を上げ、マスコミがそれを取り上げれば、今まで移管場所がないと言っていた行政の発言が嘘のように棚上げされ、移管場所が「見つかる」のである。
放射性廃棄物や除染土壌を学校や保育園に保管しているのは、実は横浜市や横須賀市など神奈川県に限らない。調査でも千葉県白井市、東京都大田区、埼玉県八潮市では埋め立て保管されていることがわかっているが、これら東日本全地域における放射性廃棄物の学校保管をやめさせようとする声は、横浜市、横須賀市における移管をきっかけに、広がりつつある。
【続報】一部学校では、引き続き埋め立て保管
横浜市では、前出「横浜の会」が10月17日、横浜市に対して放射性廃棄物の学校外へ移管を求める追加署名分742人分を加え、5038筆分を提出し、要請行動を行った。
横浜市は、その後の説明で、ポンプ室や倉庫などに保管していたものは、北部汚泥資源化センターに移管するが、100カ所以上の校庭や園庭などに「埋め立て保管」(実態は10cmの厚さに覆土しただけのものも)した分は、そのまま放置すると発表した。移管先の建物のスペースは十分に広く、移管は不可能ではない。
しかも横浜市の基準では、安全だとしていた除染土壌は、市民がサンプルを受け取り民間測定所で測定したところ1キログラム当たり2万3000ベクレルに上るものもあった。この値は、原子力発電施設などの電離放射線規則の適用施設でしか取り扱えない、レベルの高い汚染濃度である。そこで10月17日、横浜の会は署名提出の際に、現在学校や保育園で保管している汚染物は、保管の状態のいかんにかかわらず、すべて移管するように求めて交渉した。
全文は放射能汚染物、小中学校等に保管・埋め立て…環境省と横浜市、事実把握し5年間放置