2015年10月14日、韓国釜山市で開催された第20回釜山国際映画祭(10月1~10日)でこのほど、キム・ギドク監督の新作「STOP(原題)」がワールドプレミア(世界初)上映された。東日本大震災と福島第一原発の事故をモチーフにした作品。全編日本でロケ撮影され、キャストも全員日本人。キム監督のほか、中江翼、武田裕光、合アレンが同映画祭に参加した。
映画は原発がある地方都市が大地震に見舞われるシーンから始まる。この町に住む若い夫婦は、避難命令を受けて東京に避難するが、妊娠中の妻は胎児に影響が出るのではないかと気が気ではない。そんな妻を安心させるため、自宅周辺に戻って以前と変わらない風景を写真に収めようとする夫は、そこで衝撃的な光景を目撃する。やがて、胎児を守る気持ちを固めはじめた妻とは対照的に、夫は不安にさいなまれ、極端な破壊行動に出ようとする。夫と妻、そして子どもには、どんな未来が待っているのか――。
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これまでも過激な表現方式で社会を批判してきたキム監督。今回の批判の対象は従来の作品にみられないほど具体的だ。タイトルからみても明白なように、映画のメッセージはきわめて直接的である。韓国もエネルギーを多くの原発に頼っている国だ。「なぜチェルノブイリやフクシマに学ばないのか」という問いかけは、監督の強い危機感そのものだろう。(編集/遠海安)
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