日本を代表する作家の村上春樹さんが、ネット上で脱原発の必要性を訴えた。読者の質問に答えるサイト「村上さんのところ」で38歳の男性が書いた「原発NO!に疑問を持っています」という質問への回答として、4月9日に掲載された。
男性が「年間5000人近く亡くなっている交通事故の方が原発よりも身に迫る危険性が大きいのでは?」などと質問したところ、次のように答えた。
た しかに年間の交通事故死が約5000人というのは問題ですよね。それについてはなんとか方策を講じなくてはと、もちろん僕も思います(最近は年々減少して いるようですが)。しかし福島の原発(核発電所)の事故によって、故郷の地を立ち退かなくてはならなかった人々の数はおおよそ15万人です。桁が違いま す。それだけの数の人々が住んでいた土地から強制退去させられ、見知らぬ地に身を寄せて暮らしています。家族がばらばらになってしまったケースも数多くあ ります。その心労によって命を落とされている方もたくさんおられます。自死されたかたも多数に及んでいます。その人々の故郷はいつ戻れるかもわからない土 地として、打ち捨てられています。
(略)
効率っていったい何でしょう? 15万の人々の人生を踏みつけ、ないがしろにするような効率に、どのような意味があるのでしょうか? それを「相対的な問題」として切り捨ててしまえるものでしょうか? というのが僕の意見です。そ れからちなみに、「年間の交通事故死者5000人に比べれば、福島の事故なんてたいしたことないじゃないか」というのは政府や電力会社の息のかかった「御 用学者」あるいは「御用文化人」の愛用する常套句です。比べるべきではないものを比べる数字のトリックであり、論理のすり替えです。僕は何度もそれを耳に してきましたが、耳にするたびにいささか心がさびしくなります。
(原発NO!に疑問を持っています – 村上さんのところ/村上春樹 期間限定公式サイト 2014/04/09)
全文は 村上春樹さんに読者が聞いてみた 「原発より交通事故の方が問題では?」
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