(抜粋)
鎌仲は2002年、湾岸戦争での劣化ウラン弾によるイラクの人々の被害を撮った。劣化ウラン弾は、原発の燃料用に濃縮ウランをつくるときに出る「ごみ」が原料だった。
それがきっかけで日本の「原発のごみ」に目を向けた。日本には青森県の六ケ所村に、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取りだす再処理工場など核燃料サイクル施設がある。日本原燃が運営する。
04年、はじめて六ケ所村を訪ねた。2年間にわたって230時間撮影し、約2時間の映画にした。ドキュメンタリー映画「六ケ所村ラプソディー」。06年に公開され、全国で上映会が催されてきた。
映画は、雄大な自然の光景と津軽三味線の曲で始まる。
撮影の最初のころ、鎌仲はとまどった。「嫌なもの」であるはずの原発のごみが「村を豊かにするお宝」とされ、それを「そうだ」と言わないと生きていけない社会があった。
映画の中で、村一番の建設会社会長で村議の岡山勝広(65)がいう。
「ここは再処理、貯蔵。(原発を運転するわけではないので)核が暴走することがないわけです。実際、そんな危険なものでもないし」
「村はあらゆる可能性がある。ビジネスチャンスもいっぱいある」
使用済み核燃料の受け入れ作業をする元漁師や、村でもっとも大きいクリーニング店の社長らは、核燃サイクル施設と生きることを「子供たちのため」といった。
鎌仲はそれを「サバイバル」と見た。「村で生き残るには、選択肢はそれしかなかったのです」
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