<NHKラジオ ビジネス展望>「原発再稼働のコストと事故リスク」(案)via WebRonza

NHKの朝のラジオ番組に出演予定だった中北徹・東洋大教授が、30日放送予定だった番組内で脱原発をテーマに取り上げようとしたところ、NHK側 にテーマ自体の変更を求められ、放送が中止になった。今後の出演などにはついては現在のところ不明。「都知事選中は原発問題はやめてほしい」と言われたと いう。

番組は月~金曜の午前5~8時のラジオ第1放送「ラジオあさいちばん」。中北教授は「ビジネス展望」というコーナーに20年来出演しており、30 日朝も「原発の再稼働のコストと事故リスク」をテーマに出演する予定だった。だが、前日に原稿案を見せたところ、ディレクターに「テーマを変えてくれ」と 言われたという。

いったいそれはどのような内容っだったのか。WEBRONZAはその原稿案を紹介する。一連の報道を受け、中北教授に依頼し、提供を受けた。以下がその全文だ。

<ビジネス展望>

「原発再稼働のコストと事故リスク」(案)

2014.1.30
東洋大学経済学研究科
中北 徹

 

Q1.イントロ・・・

A1.(都知事選で焦点となっているとされ、また、国会の質問でも取り上げられている、原発再稼働の問題について安倍総理も、「議論が行われるのは望ましい。」と述べている。)経済学の観点から、コメントして、いくつか論点に触れて、議論の喚起に供したい。
最初にポイントを集約する。

第一は、事前の安全確保の対策、保険料などといった原発稼働のコストが世界的にアップしていること。第二に、万が一の際、巨大事故もたらす損害が膨大化している。最後に、日本の場合、廃炉の費用が発生しているが、それが企業の費用に明示的に計上されていないこと。

Q2.それぞれ詳しく・・

A2.まず、稼働コストの上昇が上昇している。2011年の段階で、民主党政権のも と、評価委員会が示した原発の電力コストは、当時、8円/KWH 。それが、最近では、たとえば、「自然エネルギー財団」の資料などを参照すると、11円 から17円/KWHということで、2倍前後へ。その他、関連データを参照しても、2~3倍へ。

これは世界的な趨勢であって、保険料、安全確保の事故対策費などが、東日本大震災をきっかけに、リスクへの認識が高まった結果。すると、他の石炭・石油による発電コストは大差なく、小さくなっている可能性。

加えて、日本の場合、原発の廃炉の費用が積み上がってくる。廃炉技術が未開発の段階にあり、十分な試算が行われてない。

一方で、会計の観点から、廃炉は電力会社の命運を左右する大きな作業で、膨大な費用を伴うものだ。原理的には、事前に必要な費用を前倒しで積み上 げる必要がある。しかし、電力会社のバランスシートに計上されていない。過小評価されているわけで、将来国民が負担する、見えない大きな費用になる可能 性。

Q3.ということは・・・

A3.以上の全体像で、即時脱原発路線を支持するのか、それとも、時間をかけながら、緩やかに原発依存を減らしていくのか、という費用の選択の問題になる。それは国民がどう選択するのか、という政治的な課題だ。

現状では原発稼働がゼロ。しかし、そうしたなかで、アベノミクスが成果をあげている。株価が一昨年末から大きく戻し、今年は、一部上場の大企業は業績相場を達成すると見込まれている。原発(稼働)ゼロでも、経済成長が実現できることを実証したといえる。
もちろん、燃料コストがアップしているのは事実。そのこともあって、日本の経常収支の黒字額が減ってきた。これらの事情を念頭に入れて、脱原発か、それとも、原発稼働を重視して、国民がどう判断するのかが問われている。

東京都知事選挙をきっかけに、千葉や神奈川などの住民も、どこまで消費者とか、生活基盤の見地に立って、問題意識を高めていけるかが課題だ。

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