第3章 チェルノブイリ大惨事が環境に及ぼした影響
アレクセイ・V・ヤブロコフ (a)、ヴァシリー・B・ネステレンコ (b)、
アレクセイ・V・ネステレンコ (b)a. ロシア科学アカデミー モスクワ(ロシア)
b. 放射線安全研究所(ベルラド) ミンスク(ベラルーシ)キーワード: チェルノブイリ、放射性核種、放射線分解、土壌、水界生態系、生物濃縮、移行係数、放射性異常形態形成
汚染地域における大気、水、土壌の放射能レベルが、直接もしくは食物連鎖を経て、すべての生命体の最終的な放射線被曝のレベルを決定する。放射能汚染のパターンは、放射性核種が水、風、および移動性動物に運ばれることによって元来変化する。ほとんど、あるいはまったく汚染に曝されていなかった陸地や水域が、二次的な移行によってそれ以前よりずっと汚染される場合がある。さまざまな動物や植物に影響を及ぼす、そうした放射性核種の移行、および土壌中や水中での濃度の変化や生物濃縮が多くのロシア語の刊行物に記録されている(Konoplya and Rolevich, 1996; Kutlachmedov and Polykarpov 1998; Sokolov and Kryvolutsky, 1998; Kozubov and Taskaev, 2002 等のレビューを参照)。チェルノブイリに由来する放射性核種の降下物が、生態系や動物、植物、微生物の個体群に与えた影響について、よく論証されている。
本書は、チェルノブイリの影響に関する利用可能なすべてのデータを紹介するものではなく、多くの問題を映し出し、汚染の甚大な規模を示すデータの一部を選んで提示するに過ぎないことを、第1章、第2章において繰り返し強調してきた。第3章でも同じように、大惨事が動物相、植物相、水、大気および土壌などの生物圏に与えた多大な影響についての資料のごく一部を取り上げる。住民の健康への影響が軽減するどころか、むしろその規模と深刻さを増しているように、自然への影響についてもいまだ十分に記録することも完全な理解を得ることもできず、また、影響は必ずしも小さくならない可能性があることを強調しておきたい。
◇来日した放射能専門家が、福島市民の前で発した重い警告
◇報告全文の英語訳は当サイトEnglish Resourcesからもダウンロード可。