東京電力福島第1原発事故に伴う「帰還困難区域」の影響で、通行制限されていた国道6号(福島県双葉町-富岡町)の解除から15日で1カ月が経過した。県沿岸部の大動脈が開通したことで交通量は増加し、復興の加速が期待されている。ただ解除区間を訪ねると、放射線量は今も高い状態が続き、空き巣の懸念など新たな悩みも出ている。(大渡美咲)
解除区間は14.1キロで、車で20分ほどの距離。北部の南相馬市から南部のいわき市への移動は内陸を迂回(うかい)していた従来に比べて1時間半も短縮した。
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除染は完了したものの、環境省によると、解除区間の空間放射線量は平均で毎時3.8マイクロシーベルト。高い所では17.3マイクロシーベルトに及ぶ。バイクや自転車、徒歩での通行は認められず、駐停車も原則できない。信号はほぼ黄色点滅で警察車両と何度もすれ違った。国土交通省磐城国道事務所のまとめでは、先月15日からの平日通行量は9500~1万800台で、8月中の平日平均6400台に比べて大幅に増加した。これに伴い、物損事故などが増えている。盗難など目立った事件は起きていないが、福島県警双葉署は空き巣や放火などの犯罪を警戒し、日中だけでなく、街灯がない夜間もパトロールしている。
観光帰りに通った茨城県鉾田市の勝山敏宏さん(55)は「ここはまだ復興が進んでいないと感じた」と話す。いわき市の運送業、草野一雄さん(59)も「常磐道と結ばれれば、さらに便利になるのだが」。インフラ整備が進まない帰還困難区域の現実を改めて感じさせた。
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