原子力規制委員会が原子力発電所の火山対策で手探りを続けている。再稼働した原発について影響評価をやり直すよう初めて求めたほか、独自の調査研究にも乗り出した。火山噴火は不確かな部分が多く、効果的な審査のあり方を模索する。
「前提条件に有意な変更が生じる可能性がある」。2018年12月、規制委は福井県にある関西電力の大飯、高浜、美浜の3原発について、約200キロ離れた大山火山(鳥取県)の噴火で降り積もる火山灰の影響評価をやり直すよう命令した。3原発は審査に合格し4基が再稼働済みだが、噴火に関する新たな研究成果が報告されたため。合格した原発で影響評価をやり直す「バックフィット」は初めてだ。
火山対策は東京電力福島第1原発事故後に施行した新規制基準で初めて導入された。審査は規制委の「火山影響評価ガイド」に基づき活火山の火砕流や溶岩流が到達する可能性が十分に小さくなければ稼働を認めない。評価のやり直しは想定されていたが、再稼働した原発で繰り返されれば審査の信頼性にかかわる。
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今後焦点となるのが、破局的噴火の扱いだ。火山灰など噴出物の量が極めて大規模で広範囲に壊滅的な被害を受ける。だが発生頻度が1万年に1回程度と極端に低く、未解明の面が多い。
このため規制委は独自の調査に乗り出す。19年度から破局的噴火を起こした北海道の洞爺カルデラや鹿児島湾の姶良(あいら)カルデラなど5つの火山で地質や岩石を調査する。姶良カルデラでは21年度にも海底に地震計などを設置し研究目的の観測も始める方針だ。
カルデラの多くは海や湖の底に沈んでおり、世界的に観測の事例がほとんどない。規制委はイタリアの国立研究所がナポリ近郊の海底で常時観測する手法を参考に鹿児島湾での観測に適した装置などを検討する。規制委の担当者は「まだ有用なデータが得られるかも分からない」と話す。
破局的噴火は原発の再稼働を巡る裁判で争点にもなった。広島高裁は17年、四国電力伊方原発(愛媛県)に阿蘇カルデラ(熊本県)の火砕流が到達する恐れがあるとし運転差し止めを命じた。同高裁は18年の異議審で決定を取り消したが、規制委の火山ガイドについて「噴火の時期や規模を相当程度の正確さで予測できることを前提としており不合理」と批判した。
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規制委は原発周辺の火山で巨大噴火の兆候があった場合、原発の停止などの命令も想定して専門部会で議論も重ねる。
日本は世界でも有数の火山大国だ。新規制基準ができてから5年半が過ぎ、火山対策の議論は新たな局面を迎えつつある。(越川智瑛)
全文は原発の火山対策、手探りの規制委 関電3原発で