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南相馬「大悲山の石仏」を守る「保存会会長」の「原発事故」と「いま」via Foresight

寺島英弥

1000年以上前の知られざる磨崖仏(まがいぶつ)群が福島県南相馬市にある。

一昨年、東京電力福島第1原子力発電所の事故による避難指示が解除された小高区の泉沢地区。福島県内の多くの被災地と異なり、大半の世帯が帰還し、磨崖仏群の保存会の活動に集う。

元原発作業員、石井光明さん(71)の家には孫娘も生まれ、「保存会の長年の絆が、離散を乗り越えて集落をよみがえらせた」と語る。

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「津波対策なんて誰も考えていなかった」

石井さんは東日本大震災の3年前まで、泉沢から国道6号を南に30分ほど行く福島第1原発で働いていた。

「40歳から22年間、双葉町にあった東京電力の協力会社に勤め、原発の保守点検の仕事をしていた。このあたりではごく普通の勤め先だった。定期点検などで原子炉建屋の清掃作業もやった。4、5人で班を組み、スコッチブライト(工業用研磨剤)と市販の洗剤で汚れを落としたり、フル装備の防護服で原子炉の炉心にも入って除染をしたり。一番汚染がひどい『C、D』レベルの時は、放射線量が最高で0.80(マイクロシーベルト毎時)くらいだったが、作業は30~40分、往復の移動時間を除けば20分くらいでやらねばならなかった」

当時は女川(宮城)、志賀(石川)、大飯(福井)など遠方の原発にも赴いたという。

「近隣の作業員を20人くらいを引率し、班長として出張したよ。長い時で3カ月くらい家を空けて。皆、1日の仕事が終われば飲みたいし、あとはパチンコくらいしか楽しみがなかった。家族に会いたくても、自分だけが帰るわけにはいかなかったな」

60歳で定年を迎えた後も2年間現場に残り、2008年に仕事を辞めた。

「もう3年、勤めを延長することもできたし、そう勧められもしたんだが、辞めた。もし続けていたら当然、原発事故に巻き込まれていた。津波で全電源喪失という、あの事故を知った時は正直、『そんなことがあっていいのか?』と不思議だった。第1原発には、地震に備えた耐震設備はあった。でも、津波対策なんて、俺がいた当時の現場では誰も考えていなかった。津波が来たらどうする、なんて頭にもなかったな」

大震災の当日は、妻の一枝さん(66)と泉沢の自宅にいた。避難したのは2011年3月15日の午後。「地震で家中のものがぐちゃぐちゃに散乱し、仏壇が吹っ飛び、後片付けをやっていた。11日の大地震で一時停電になった後、テレビで翌12日の(1号機原子炉建屋の)爆発を知った。それでも、原発の内部のことをよく知っているつもりになっていて、『まさか、最悪の事態まではいくまい』という安全神話が自分にもあったんだな。15日までとどまったが、また(2号機圧力抑制室付近の)爆発があり、家族3人暮らしで年頃の娘もいるので、もういかんと思った。いったん原町に避難した後、一枝のおばさんが農家をしている白石市(宮城)に移り、そこで草刈りを手伝ったり、ボランティア作業をしたり。原町の借り上げ住宅が10月に決まって、戻ってきたんだ」

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娘家族と暮らす石井さん

「去年の10月8日に、原町の借り上げ住宅から越してきたんだ」。今回の取材で、大悲山からの帰路に立ち寄った石井さんの新居。2016年7月に小高区の避難指示が解除され、翌年の7月下旬にはベージュ色でモダンな2階建て、40坪の家が完成していた。「若いころに苦労して家を建て、家族の古里にした場所だ。帰還しないなんていう選択肢はなかった」

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新居は2世代住宅だ。1階には広い畳の間があり、次女の千明さん(33)が、2歳になったばかりの長女・美咲ちゃんと遊んでいる。避難中だった3年前、今も勤める市内の電機部品会社で職場結婚した夫、舘山裕司さん(55)と3人家族で、両親と同居している。

帰還者の大半が定年後の60~70代の泉沢で、唯一の若い家族であり、幼子だ。「両親が泉沢に帰ると言っていたので、私も迷わず決めていた」と千明さん。周りの知人からは、「本当に帰るの」「危なくないの」と心配された。大熊町にあった母校の高校の同級生らは県外に避難したまま、1人も帰ってきていないそうだ。

「でも、父が草刈り機を買って泉沢に通い続けるのを見て、けがを心配しながら、すごいな、立派だなと思った。美咲が生まれ、一緒に暮らせるのを両親は喜んでくれたし、集落の人たちも皆で声を掛けてくれる」

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